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新潟市の泉心道鍼院よりメッセージ
治験発表生理不順を伴う症例
2011年1月21日
生理不順を伴う症例
1例目 (陽虚外寒の証)
患者30歳女性主婦
主訴
全身倦怠感
現病歴
3年前に出産後、体がだるく、胃痛・頭痛・肩こり・寝つきが悪い。
既往歴
子供のころより喘息、眼や口の周りが痒くなりやすい。生理痛。
家族暦
子供たちと母親が本院で治療中。
望診
身長165センチ体重50キログラム痩せ型。
尺部の色は分かりませんでしたが、切経するとつやはあると判断しました。
聞診
やさしい話し方、5音5声5香は分かりませんでした。
問診
徐脈であり、最近胸が苦しい。睡眠は寝つきが悪く寝た気がしない。立ちくらみ・動悸・食後胃がつかえる。便通は1日1回。わりと尿が近く、夜中1度はトイレに行く。生理が二十日くらいで始まり、終わるまでに1週間以上かかる。
足の冷えを感じる。風邪を引きやすい。
切診
切経
皮膚は薄く冷たい。肌が乾燥しやすい。両ナソ部に生ゴム様所見を触れる。血圧123・68。脈拍47。
腹診
虚腹で胃部が硬い。
脈診
脈状診
沈遅にして虚。
比較脈診
肺・脾・肝の見所虚。陽経胃の見所ややあり。
他は平位と見ました。
病症の経絡的弁別
全身の倦怠感、体がだるい、胃痛、寝つきが悪く寝た気がしない、食後胃がつかえる感じなどは脾土経の変動。
肩こり、皮膚のざらつき、乾燥しやすい風邪を引きやすい、尿が近い、喘息、顔の痒みなどは肺金経の変動。
胸が苦しい、動悸、胃部の硬さは心火経の変動。
立ちくらみ、手足の冷えは腎水経の変動。
生理痛、生理不順、生理が長く続く葉、肝木経の変動。
診断と予後の判定
患者の主訴や病歴などで判断すると、脾の変動が大きく迷いましたが、肺経や脾経の切経や手足の冷たさなどは、上焦の気の巡りが悪く、手足に栄養を及ぼせないためと判断し、証を肺・肝相剋調整としました。
予後は、出産前の28日周期に整理の状態を戻すことと、陽分に不足している気を巡らせることを目的にすれば改善は見込めるものと考えました。
治療および経過
初診 2006年9月11日
銀1寸2番鍼で右太淵・太白・左太衝に補方。見脈し、脈にやや力が出てしっかり触れる
ようになりましたので、陽経の処理として、胃にじゃを触れましたので、こに応ずる補中の瀉法を行いました。
脈が整ったことを確認し、腹部散鍼後、ナソ処置を行い深瀉浅補。
背部に補鍼を行った後、れっけつ・照海に左右5・3の奇経灸を行いました。
治療後、生理周期の改善を目標に治療することを納得してもらい、
終了としました。
9月30日2回目
眠気と頭痛がある。脈診すると肝の見所に滞りを触れましたので、肺・肝の和法とし、皇孫・内関グループで奇経灸を行いました。
次からは排卵日と思われる時期と、生理が始まる前に来院してもらうように治療をすることにしました。
動悸・息苦しさも取れ、生理も27日となり、12月七日生理もすっきりと終わると喜ばれました。ただし、途中子供たちから風邪を移され、咳・痰・鼻水・喉の痛みなど症状が出ました。あるていど生理の周期が安定してきましたので、排卵日などにはかかわらず月3回の治療にするように換えたところ、又次の周期が25日に早まってしまいました。2007年1月12日まで治療をしましたが、眠れるようにもなり、顔の色艶が良くなってやさしい顔つきになったと、母親やだんなが来院したときに言われました。
訪問看護の仕事を再開し、通院を続けるつもりのようでしたが、今は時間が合わず、遠のいています。証はおおむね肺を本証としていますが、寝つきが悪いとの訴えがあったときは脾や腎で行うと結果があまりよくなかったようでありました。
2例目(陰虚内熱の証)
患者女性37歳会社員
主訴
頭痛・全身の冷え。
現病歴
3年ほど前から偏頭痛があり、しだいに後頭部から頸背中にかけて緊張があり、手足の冷えと吐き気がある。
既往歴
小学生のころ扁桃腺を手術。生理不順と痛みのためホルモン剤を服用中。
望診
身長160センチ体重45キロやせ方。
血圧110・60。尺部のつやあり。
問診
頭が常に重く痛くなると頭痛薬を1日一度は飲む。ひどいときは2度も飲むが効かない。
便通1日1回、胃がつかえる感じ、胸苦しい、手足が冷え、特に手で自分の体を触るのも嫌である。夜は眠れず、1度はトイレに行く。
頸肩背中が凝る。風邪を引きやすくとても寒がりである。
生理は月に2回もくることがあり、1週間続くが少量であるとのことでした。
説診
切経
手足先ばかりでなくその上側も触ってみると、非常に冷たい。
ナソ部は特に右側に生ゴム様所見が認められ、頭部を軽く触っても痛がる
腹診
虚腹軟弱で肺の見所虚。
脈診
脈状診
浮数虚
比較脈診
肺脾虚、肝ややあり。胃もややあり。他は平位と見ました。
病症の経絡的弁別
全身の冷え、頸背中にかけての凝り、頭が重い、寒がるは腎水経の変動。
多発性月経、頭痛は肝木経の変動。
吐き気、胃がつかえる、眠れないは脾土経の変動。
風邪を引きやすいは肺金経の変動。
胸苦しいは心火経の変動としました。
診断と予後の判定
この症例も病症から見れば、腎・肝を本証にすべきであると思うが、腹証脈症が一致していることと頭痛や吐き気があるなど、激しい症状は邪が入っているものと見て、肺・肝の和法で行うこととしました。
予後は薬を長く服用し、なおかつ、依存状態にあるため、鍼で症状を軽減させ、薬の服用を控えさせることを目標にして治療を行うこととしました。
治療および経過
初診平成7年1月四日1回目
銀1寸2番鍼にて右太淵・太白に補方。左太衝に和法。豊隆よりこに応ずる補中の瀉法。
見脈し数が治まり浮いていた脈も中位になりましたので、ナソ処置にたいし深瀉浅補。頭部から後頸部背部にたいし虚した部に接触補鍼を行い終了といたしました。
1月九日2回目
治療した日は頭痛薬を飲まなかった。しかし、今日は頭が痛く2回も飲んだが効かないとのことでした。
証は前回と同じとし、もう一度薬の服用を減らしていくように説明し帰宅してもらいました。
1月13日3回目
少し薬を減らしている。脈診で膀胱経の邪を触れ、陰陽の差の大きさより腎・脾に証を換えて治療をしました。
それから6回ほど腎本証で治療をしましたが、、
1月25日この間の治療後、生理が来て腹痛が強かった。昨日は頭痛も強かったといわれました。
頭痛が強いときはれっけつ照海に、そんなに強くないときは照海・れっけつに奇経灸を行っています。
1月30日7回目よりまた肺本証に戻し、頭痛薬の回数も減り、安定剤も飲まないで眠れるようになったとのことであります。
排卵日の時期を中心に治療計画を立て、現在も継続中であります。
考察
どちらの症例とも生理不順を伴うことで、比較治験として発表しましたが、1例目は陽気の不足によりだるさ眠気等、日中はあり、夜はやや寝つきが悪いなど、気虚になっている状態。2例目は薬の服用により血にまで影響が出て逆気症状を引き起こしているものと思われ、体型や症状が似ていても全く正反対の病理像を呈していると思われます。
しかし、両症例とも病症と脈症が一致していないにもかかわらず、諸症状が良い方向へ向かっていると考えたとき、改めて証を決定する難しさを感じます。
最終的には脈症で決定する経絡治療ですが、今後は脈に症状をあわせていける治療かになりたいと思います。
2007年2月新潟支部定例会において 学術指導員 今泉聡)
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