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新潟市の泉心道鍼院よりメッセージ

経絡治療要綱誤治調整の解説

2010年10月20日

誤治調整の解説

本文

『誤治を招いた場合には経絡説に従って、診察診断治療に渡りその経過を検討しなおすならば必ず不良面が抽出され、それに即応して修正治療を加え治癒に導くことが出来る。一定の理論もなくあれこれと自己流の治療を行なったり名人大家の秘伝名灸を使用してドーゼを過ごした場合には、「乱鍼」といって誤治と区別している。』

誤治調整には、主証の正否/主穴の適否/ドーゼの多少/表治法のいかんがある。

主証を取り違えたばあい

本文『恐ろしい逆反応が現れ、病状が増悪するとあるが、体質によってはあまり変化のないばあいもあるし、補瀉の技術が未熟であいまいな場合は主証を取り違えてもたいした変化は起こさない。』

柳下先生は先回の講義で証の間違えに気付いたときは、相剋する経を処置するほうが良い。やり直しをすると2度同じ経絡を弄り、1度弄った鍼の影響力は体に残っているので、しないほうが良といわれた。

主穴の適否

本文『要穴の5行的性格や病症的性格。元/隙/絡穴の特徴を考えて再検討し、法則に適合した最も合理的な選穴を行なう。』

ドーゼの多少

本文『疲れ/動悸/眠け/目眩とうをきたし、諸症状は増悪し

発熱おしんとうをきたし、時に苦痛が激しくなって全く動けなくなる。ドーゼを過ごした場合は、脉症を見直し処理している経に円鍼を施し項頚部背部等を撫でさするとある程度感解する。三里/ちゅうかん/関元/天柱/風池/百会などにごく静に補うことで気分がある程度落着く。逆に、ドーゼが足りない場合は、要鍼を太くするか深度を深くして時に刺鍼の時間を長くする。』

表治法のいかん

本文『主証/主穴/ドーゼが適切であっても理患部への表治法が適切でないと予期した成績を上げることが出来ない。特に、慢性症の治療に当たっては、表治法に特別な工夫を払わないと治療日数がかかり過ぎ不成功に終わる。経絡体型の中で、しご/奇経/ナソ/しらくという救急法がもちいられる。』

脈状に応ずる手法

本文『これは、寒熱、虚実にたいする整脉力ということになる。「暑熱を刺すは手にて湯をさぐるがごとく。(早手刺し)、寒せいを刺すは人の行くことを欲せざるがごとし(入念型か留置鍼となる)」

その脈状によって手技手法を正確に使いこなさなければならない。虚実を正しく把握するためには、脈状を血と気にわけ、更に、風/暑/飲食労健/寒/湿の5邪に従って脈状観察をして、その手技手法を施して行なう。

更に、弾脈のごとき特殊脈を捕らえ、

これを陽に浮かせて処理することも真に重要である。

これらがおろそかにされるときは、成績不良となるばかりでなく、時に大きな誤治を引き起こすことさへもある。』

私が臨床で行なうこと

1 脈が開いたとき、一番開いてしまった陽経を経に逆らってなでる。(胆/胃など)

2 胸がどきどきしてきたものには、内関あるいは外関を静に補う。

3 皮膚が薄いもの、心下部が鋭角な人は、ドーゼに注意する。

4 気の流れが速いものには、球の大きく長いてい鍼を使用するとゆっくりとした脈になる。

5 病症が陽分にあるものは、治療後、痛みが騒ぎ出しても誤治とは判断しない。(熱も同様)

6 患者の訴えのみで正治か誤治かを判断するのは危険である。皮膚の状態と脈状で判断すべきである。

7 円皮鍼/皮内鍼/銀粒などの貼付は、柳下先生は「治療をしたという証拠を残さないようにしたいので、つけては帰さない」といっている。そのようになりたい。患部よりやや離れたところで反応を見つけ貼ったほうが良いようである。

以上、誤治にたいする解説をいたしました。

2006年9月24日新潟支部定例会において 学術指導員 今泉 聡

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治験発表帯状疱疹の1治験

2010年10月18日

帯状疱疹の1治験

帯状疱疹の概要

帯状疱疹には、大きく分けて眼の部/三叉神経第1枝第2枝に出る眼部帯状疱疹といわゆる帯状疱疹とに分けられます。

代表的な症状としてい神経痛/帯状の発赤/丘疹/嚢疱/局部の糜爛/

潰瘍/果皮など。

症状がよく似ている病気として、単純性疱疹。起こりやすい合併症として、ウイルス性脳炎/内臓悪性腫瘍。

どのような病気か?

水頭が治った後、水頭帯状疱疹ウイルスは、三叉神経節や脊髄後根神経節に潜伏感染を生じます。

潜伏していたウイルスが再び活性化されて皮膚に到達して病変が生じるのが帯状疱疹です。

どうして病気が起こるのか?

ウイルスの再活性化はどうして起きるかは明らかではありません。

しかし、なんらかの理由で免疫力の低下が生じてそれまで眠っていたウイルスが増殖を始めるものと思われます。

どんな現れ方か?

まず、頭痛/肋間神経痛/腰痛などの神経痛が右側か左側か片側性に生じます。

2、3日遅れてその場所に帯状に発赤が生じ、丘疹水疱/嚢疱/が出現します。1日から2週間で果皮を形成し治癒しますが、しばしば、瘢痕を残してしまいます。

病気を治すには?

軽症例では、消炎鎮痛剤の服用と内服と消炎外用薬の外服で充分です。

重症例で入院して抗ウイルス剤を点滴します。

中等症例では、外来にて抗ウイルス剤の内服を行ないます。痛みが強いばあいは神経ブロックを併用します。治った後でも神経痛が残ることがあります。

病気の予防?

抗ウイルス剤の治療はなるべく早期に開始したほうが良いので、症状の程度にかかわらず、まず皮膚科専門医を受診するのが大切です。

帯状疱疹患者に接触しても帯状疱疹は生じません。

以上が現代医学から見た帯状疱疹に対する概説です。次に症例を紹介します。

症例患者78歳女性

初診 2004年10月29日

主訴

左胸から脇腹背中にかけての帯状疱疹。

現病歴

8月二十日に左胸から背中にかけて帯状疱疹が出て薬などによりかなり改善したが、まだ背中から前に向かって「ズズーン」という痛みがある。前に引っ張られるような疼痛である。

問診

今まで自分では健康であり、医者係りをしたことはない。痛みのため最近眠りが浅く、しばしば目覚める。患側を下にして横にはなれない。

けつあつ117/74。便通は1回。

望診

小柄でややぽっちゃりとした感じ。

肌にはつやがあり暖かい。

切経

左の乳下部第6、第7肋間ににそって肩甲間部まで瘢痕が残っている。

両ナソ部になまごむよう所見がある。胸椎が円背ぎみで背部緊張あり。

腹診

全体的に押しても力がなく、虚腹で特に腎の診所虚。

脉上申

沈やや数にして虚

比較脈診

腎/肺/脾虚、胃胆ややあり。

病症の経絡的弁別

まず、疱疹のるちゅうじょうで大別すれば、胃経/胆経/ようい脉。皮膚病と捕らえて肺経/大腸経。痛みでは胸から脇の痛みで心経前側に及ぶ痛みを心下痛として脾経ないし肝経。夜痛みが出て眠りが浅いは腎経と見ました。

予後の判定

発病から2ヶ月あまり立ってからの来院で未だ瘢痕を残し痛みもあること、薬を内服していることなどを考え、予後は不良であると判断しました。

適応側の判定

女性でもあり病側が左側ということで、右としました。

治療方針

患者の来院理由が友達などの話で帯状疱疹を鍼で治した経験があると聞いてきての来院で2ヶ月あまり皮膚科を受診しているが、思ったより治りが悪く、痛みが取れないことが特に気にかかる様子であったことなどから、鍼に対する期待が強く「治療には時間がかかりますが、痛みは取れてきますし、瘢痕もしだいに消えますから」と話をして継続治療としました。

内服薬はなんどか種類が変わり、副作用とも思われる疱疹の増悪が見られましたので、

取りやめてなんこうを塗るだけとしてもらいました。

まず、右復溜穴に銀1寸2番鍼で経に従って静に刺入し、再気の後素早く罰鍼する補法を行ないました。やや数の脈が平となり同じ方法で右尺宅、左陰陵泉に補法を行ないました。

見脉し胃経/胆経に明瞭な邪を触れましたので、

ステン1寸2番鍼に換えてけんにおうずる補中の瀉法で処理しました。

見脉後中位に脈が落着きましたので、表治法としてなまごむよう所見に対するナソ処置と左患側の瘢痕周囲に散鍼。胸椎側こうけつ圧痛所見に棒灸にて温灸、最後に左外関/臨泣に棒灸にて奇経灸をを行ないました。

1週間に2回ほどの治療を支持し、その日は帰しました。

2回目11月二日

「まだ水疱があり当たると痛みがある。」脈診では腎の脈は深く沈めても感じられ膀胱に邪実があるようにも思えました。それと肝の脈がく強く硬く降れたため、

今日は肺/肝の和法で処理しました。

以来、カルテを見て気付いたのですが、交互に腎/脾相剋と肺虚本証で8回まで行なっています。

3回目11月五日

「痛みは胸のほうへ走ることが多い」腎/脾相剋。

4回目11月十日

「まだ痛みは左胸へかけて走る」肺/肝の和法。

5回目11月15日

「まだ発信が起こりやすい」腎/脾相剋。

6回目11月19日

「少し痛みが楽になりつつある。肺虚肝実証。

7回目11月24日

「体が引っ張られるような痛みがある」腎/脾相剋。

8回目11月30日

「痛みは少し和らぎつつあるが、まだ後は残っている」肺虚肝実証。

それからは1週間に1度の来院で

9回目12月七日

「胸のほうへ痛みが走るのは少なくなったが、薬の影響か皮膚がただれてしまった」肺虚肝実証で4回続けて治療(12回目12月28日まで)し、

14回目2005年1月17日の

問診では「立ち上がったときなどに痛みが出る」と訴えていた。

15回目1月25日

「ようやく悪い側を下にしても痛くなくなった。」

このときは腎/脾相剋で治療し以来、来院はなくなりました。

発疹の痕跡も痛みもほぼ完治したものと思われます。

考察

発病からほぼ治癒となるまで約5ヶ月。鍼治療を開始してから3ヶ月、15回の治療日数がかかりました。

「鍼がよく効いて手ごたえ充分。受けた患者さん大満足。」とはいえないかもしれませんが、鍼をし始めてから痛みが徐々に軽減していったことと、瘢痕の消失が速くなっていったことは、疑うべくこともないところです。

皮膚科に受診しながらの鍼治療でしたので、薬をつけていて途中皮膚がかぶれ薬を換えるなどの経過は見られましたが、

飲み薬を止めていて鍼で治したいという患者の気持ちがありましたので、結果的に治癒に導けたと思います。治療の回数と間隔については、最初の1ヶ月は週2回の治療で残りはほぼ1回の治療で計15回と私の思いと患者の来院が珍しく一致して理想的であったと思います。反省点は特に現代医学的な知識もなく、振り回されたということもなかったのですが、帯状疱疹を経絡学的に捕らえる事が出来なかったので、最後まで証を迷いました。

頭では痛みを取ることへの集注をしますが、触ったり問診時など特に初めの数回は発疹の状態に気を捕られてしまったことが、原因かもしれません。目先の症状から類推してもっと奥にある病変の状況を経絡学に基づいて判断していかなければならないと思いました。

自分でこの治験を書くために、カルテを読み返し驚きましたが、1回3回5回7回15回が腎/脾相剋、後は肺虚本証で行なっています。

症状が増悪したとか好転したとかはあまり関係なく証を換えていますので、

そのときの脈診都腹診の状態で換えていると思います。

どうしても少し脈診が身についたつもりになっていると

簡便な脈と腹を見て

判断してしまう癖がついてしまっているようで、戒めなければならない点であります。

「びっくりするほど著工を上げた」とか、「この穴を使ったら症状が改善した」などの有効な決め手があって治せたまたは治った治験ではけっしてありませんが、回を重ねて粘り強く治療をしていったら、判定勝ちとなったような症例だったと思います。

これが本当の経絡治療の有効性ではないかと思いました。

2005年新潟支部定例会において 副支部長 今泉聡

追記

この発表は治療終了まもなくに行なったものですが、それから数ヵ月後に再来院があり、発表では完治と書いていましたが、残念ながらこれは今泉の思い込みで痛みは完全には取れていなかったようです。患者さんの多くはこのような人のように症状がある程度軽減するとぷっつり来院をしなくなったりしますので、何時までも症状が残ったり、又再発したりするものです。

再来院から暫く来院が続き、軽減するとは暫く遠のいて、又再来院するなど、2007年まで治療を続けました。「悪いときには頼って鍼に

来てくれる」ので良い患者さんでもありますが、完治にまでは辿りつけなく、治療科としては充分な説得が出来なかったのかとも半生しております。

帯状疱疹の鍼灸治療は、後遺症としての神経痛を残さないようにしてあげることだと思いますので、皆さんもこのような患者さんが来院されたときには、体のメンテナンスの大切さを説き再発しにくい体にしてあげてください。

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経絡治療要綱解説

2010年10月7日

経絡治療要綱4診法についての解説

近年本会でも講習生を指導する実技指導のテーマとして、「望/聞/問/切」の4診法が強調され、主役である脉診により最終決定して証に結びつける努力がなされてきた。しかしながらこの要綱が書かれた時点では、果たしてそこまでとりわけ「望/聞/問」を大切にしていたかははなはだ疑問に思う。

特に、福島先生/小里先生のご存命那ころに入会し、基本を習ったころのしょ先輩の時代は、「脈診流経絡治療」というごとく、脈診に頼る傾向が強いようだ。現在においても古い会員の多い地方支部になればなるほど「脈診」に重きをおき、「望/聞/問」の3診は完全に脇役になっている傾向はあまり変わっていないようだ。

望診 確かに視覚障害者にとって特に、

「望診」は不可能であり、助手を置いているような大先生であって も他人の言葉から得られる情報に過ぎないので、

証決定に結びつける手がかりとしての有意義性は乏しく困難を極める。

聞診ということになると、5音/5声/5香それぞれあるが、視覚障害者が「音に敏感である」というのは、一般的に誤解に近い理解の欠如とも言える認識である。

確かに健常者と違い、聴覚に頼らないといけない分だけ耳ざとくはなるかもしれないが、

その機能を活用して角音だとか宮音だとか、商音角音の混合音だとか聞診が出来る人はそうは多くないだろう?

しかし、晴眼者の治療科であれば、せっかく貴重な情報である望診を使わない手はない。

特に、眼の色、唇の色、皮膚のつや尺部の色とつや、爪の色と線の状態などを観察するとかなりの情報を入手することが出来ると思う。そして、本会ではほとんど触れてはいないが、舌診を勉強し活用することはかなり大きなこまとなると私は思う。

是非お勧めし研究発表を期待します。

それから私は尺部の色は見えないから良くその部を触診することにしている。皮膚のつやと皮膚の温寒。湿り状態。外側との比較。左右差での比較をして見る。つやがあり膚のきめが細かな人は敏感で気の流れが速いと考え浅く鍼を刺し手早く行なうほうが良い。逆につやがなく冷たいような人は脈も沈んでいるのでしっかりと鍼を入れ、ゆっくり鍼の操作を行なう。爪もよく触診し、滑らかかしわがあるか、しわは縦しわか横しわかを観察してみる。神経質な人は爪にしわがあるようで、割れて内臓になんらかの原因があるかもしれないと注意をしておく。

時々ではあるが、聴診器を用いて、心音だけではなく呼吸音グル音なども参考にするばあいがある。

問診は本文「患者の欲する「酸/苦/甘/辛/鹹」を問うてその病のあるところや経絡の変動を明らかにする。そのほか、年齢/境遇/病歴現象

(食欲/睡眠/便通/月娠/疼痛/体温)とうに渡り、これらを病因/病症/経絡病およびそのるちゅう/5臓の色対表を活用して経絡的問診を行なうべきである」となっているが、術者も患者も現代医学にどっぷり使っているので、どうしても現代医学の解釈で判断し、主訴や愁訴に振り回される結果となりやすい。

切診には、脈診、腹診、切経がある。

腹診は本文「患者に充分な説得を行なうためには、現代医学の知識も取り入れ実際に複合した腹診を行なうように勤めなければならない。この部に現れる病変には生命の予後を左右する病床が多いので、その鑑別に注意が必要である。中でも急性症としての子宮外妊娠や重篤な胆石、胃腸潰瘍、化膿性盲腸炎とうによる潜行性腹膜炎

膵臓壊疽、難症の膿胸、肺気腫、狭心症、心筋梗とうについては随伴する病症ともにらみ合わせて判断を誤らないように診察する必要がある

」と書かれている。

本会で開発した経絡腹診において、脉症/腹症一貫性により鍼治療をするならば、未然に誤治を防ぐことなり、大変優秀な診察法でであることは間違えない。

しかし、どのような患者が何時来院するか分からない我々の治療室においては臓器診をもっと勉強する必要がないかと思う。

本文「腫隆を触れたときそれが筋腫なのか癌腫なのか、両性化悪性によって患者に対するアドバイスが代わってくるので、判断を出来る触診力が必要である。大まかに区分としては、大角膜より上の肋骨に覆われた部を胸部といい、状焦げとしょうし栄衛の循環を司る。その下臍までを大腹とし中焦げといい、栄衛の精製を司る。臍下を小腹とし下焦げといい、排泄を司る。脇の下

より股関節までを大きく側腹という。まず、患者の胸骨上で呼吸や動悸をうかがい、鎖骨下で肺の気をうかがい、大腹で肺の気をうかがい、小腹において下焦げや腎肝の動悸をうかがう。特に側腹部において肝の気をうかがい、左乳下部においてはきょりの動(心先拍動)につき、心の気をうかがう。

平人無病の腹はさながらふかしたての饅頭を探るがごとく。腹部全体が実してさながら鼓の皮を押すがごときものを実証といい、その虚満のものを張満としょうし、脾胃の変動によるものである。又、大腹小腹ともにかんげしてさながら古き綿に触れるがごときものを虚腹軟弱といい、脾腎の証である。この中で蛇を入れたごとく亀の甲を押すがごとく臍の上下に筆の軸にでも触れるごときものは全て不治の難症である。

小腹より動悸せわしく大腹に攻め上り息遣い荒きものわ陰虚火動。側腹部を押して著しくかんげするは肝気の虚にしてにわかに中風を起こすといわれる。

臍下炭田の部に静かに手を当て、緩やかにして正しく拍動し和緩をおびるものを腎肝の動悸の良好とする。きょりの動はあるがごとくなきがごとく和緩をおびたものを良好とし

、軽く按じて騒がしく触れるものを気虚。押して硬く根のあるものを血虚である。

特にその動悸が激しく衣服の上から触れられるものは心気虚損の悪こうにしてにわかに心肺の病を起こす恐れがあるから、気をつける。

経絡腹診における実証の触覚所見について

実証には盛気実と邪気実があり、盛気実はその部の皮膚が滑らかではりがありやや盛り上がっている。邪実の腹症はその表面は虚に見えるが、軽く按圧すると深部に纐纈を触れ、痛みを訴える。これを按じてろうという。按じてろうの腹症のうち、痛みを感ぜず生気がなく不快を感じるものがあるが、これは邪実ではなくな難症固執による虚の腹症(しゃく)である。脾の診所や腎の診所によく現れる。」と書かれている。

切経

本文「経絡治療においては主訴や病状に基づいてその局所を触診することはもちろんであるが、12経のるちゅうに従い説経を行なって5行穴5筆要穴その他の特殊穴を目標に

切経を進めることになる。

その部の触感/体温/圧痛/纐纈/かんげ/知覚過敏とうに着目する。

経絡の触診にあたって、虚経中にも実痛あり実経中にも虚痛があるなど、実際の臨床はなかなか複雑化しているので、5行穴には経と穴とが相剋しているばあいもあり、肺虚証で肝経心経が実している場合(急性扁桃炎とう)には、

相剋関係にある承漿穴や魚際穴は実していることが多い。

しかし、あまり触覚所見に捕われすぎて証決定に繋がらないものまでも撫でまわしたり施術しているとドーゼを過ごす恐れがあるので、必要最小限に留めておく。気の動きを見る触診は重要で、皮膚面に触れるか触れないていどにごく軽く当てた指腹を静に滑らせ時に揺り動かすなどして微妙な触サツをしなければならない。生きて働いている穴を取るには、さながら点字を触読するように触って軽妙に触刷しなければならない。」と書かれている。

以上、取り留めのない話しでしたが、脈診はいうにおよばず、腹診、切経とう、触察に頼らなければならない治療法が経絡治療であり、優れた臨床かはいかに微妙な変動をその指で捕らえることが出来るかいなかにかかっていると結論付けられます。

理想をいえば、4診法を合わせて100ぱーせんととしたならば、脈診50パーセント、切診25パーセント、問診15パーセントその他10パーセントというような比重になると良い治療科という具合になるのではないかと考えるしだいであります。

2004年新潟支部定例会において 副支部長 今泉 聡

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2004年2月綱領解説

2010年9月24日

綱領解説

2004/02/22 今泉聡

参考資料

衛生業務報告 あはき師の数(平成14年)

按摩マッサージ指圧師 97313人

鍼師 73967人

灸師 72307人

業務種別施術所数

あはきを行なう施術所47パーセント(32722箇所)

按摩マッサージ指圧を行なう施術所29パーセント(20772箇所)

鍼灸を行なう施術所20パーセント(14008箇所)

その他4パーセント(2948箇所)

「我々は正しい経絡治療の学理と術技を習得することによって」とあります。「正しい」とはどういうことでしょうか?「正しくない」経絡治療は存在するのでしょうか?

日本には多数の学術団体が存在し、とかく少数派と言われる経絡治療を基礎とする団体も多数あります。特に古典に基づく治療法をしていて脈を捕る治療法もあちこちに見られるようですが、脈を捕っているばかりで実際に鍼をするときには、経絡経穴を調整する治療ではなく、あくまでも刺激点としての

経穴の運用や虚実をわきまえない経絡の調整をして、それを経絡治療だと声高にいっている輩が多いようです。

本会では脈診はもちろんのこと、押し手の手さばきによって補法瀉法のの使い分けをしていますし、経絡治療の真髄として経穴の運用によって補瀉を行なっています。まだまだ研究し臨床運用しなければならない点が多ものですが、

「正しい」経絡治療に近づきつつあり、けっして穴を使えば経絡治療であるなどと誤解してはいけません。

次に「鍼灸人としての人格と実力を涵養し」とあります。

これは大変難しい。鍼灸人としてを医療人としてのというのと置き換えても良いと思う。

次の社会的地位ということと関係していくことだが、なんといっても世間では鍼灸師などというのは、医療人などという認識がほとんどないようにも思えるし、医療としての一分野であるという認識ですら思われていないように思う。

医療というのは一般的には保険医療器官を指すものであり、病院にせよ歯医者にせよ保険が利くものを医療と捕らえる向きがあるのではないかと感じます。

そのように考えるとやはり鍼灸も保険を取り扱うことがますます重要で、いろいろな考え方があることは私も承知していますが、我々鍼灸科も保険を取り扱うように積極的に活動をしていかなければなりませんし、

「保険なんか面倒だし鍼灸を良いと分かる人は保険なんか利かなくても

かかりに来るからそれでいいんだ」という従来からの鍼灸師の、あえて言えばプライドをどう捨てさせるかが、今後の過大だと思います。

一人でも多くの患者の病苦を取り除きたいというのであれば、

一歩譲って医療としての鍼灸という観点に立ち、

保険取り扱いをする鍼灸院になられんことを考えてみてはいかがでしょうか。

考え方や生き方の問題はそうは言ってもそうそう、変わるものではありませんし、

換えさせるなどとは「大きなお世話だ」と言われそうですが、それならばせめて

鍼灸も同委書があれば

6疾患にたいしては健保が使えることを説明し、しかるべき治療院に紹介をするなど、患者の要望にそった対応が出来るよう、心がけていただきたいと思います。

最後に「鍼灸科の社会的地位を確立せんことをきす」とありますが、

病因で行なわれていないのが鍼灸の実状で、実際にはマッサージをする、リハビリーの補助をするということで、雇用されているというのが実状です。

又、近年介護保険制度導入により、「ケアマネージャー」や「機能訓練指導員」としての分野に道が開かれ、そちらの方面に進鍼灸師も多くなってきました。

このことは医療の一分野を担う鍼灸師の社会的地位の向上につながっていると考える業界の向きもありますが、私はそうは思いません。

鍼灸師はあくまでも鍼灸をすることによって、患者を治す、救う。おくがましいけれど、

それを生業にする職業です。

その考えをしっかり持っていないと道を外れることになりますよ。

もう一つ付け加えれば、鍼灸イコール按摩マッサージ指圧イコール盲人。という構図が残念ながら一般の方々のみならず、我々鍼灸師の中にも根強くあります。

この認識が変わってこない限り、鍼灸科の社会的地位などは確立されないと私は考えます。

業界や学校でも必ずあはき師という言葉で

一括りにされていますし、

とかく晴盲の比較としょうして

そのデータがよく出てきますが、普通で考えれば、晴眼者で当たり前。盲人が少数で当たり前なんです。視覚障害者の職域を守る運動は大切ですが、それだけに縛られていてはいけない。

実力のないものは晴盲問わず脱落することは必定です。

そのためにも

鍼灸師と

して経絡治療鍼専門化としての技術レベルを高めていくということは今更ながらいうまでもありません。先ほど説明した20パーセント5軒に1軒

の鍼灸院が、25パーセント、30パーセントとなっていくことを期待します。(副支部長)

2004年2月新潟支部定例会において

追記

これは東洋はり医学会の第2番目の綱領を解説したときの発表です。この時点では本院でも少ないながら保険取り扱いを行なっていました。しかし、保険対象疾患が神経痛/腰痛/リウマチ/頚腕症候群/50肩/ムチウチによる後遺症と限られ、医師の同委書に基づいて行なわれるという制限があり、又同一疾患で鍼灸と医療併用が認められないなど不備が多くあるため、2008年からは本院では保険は取り扱っておりません。保険を取り扱うよりも自由診療で料金を半額にしてどの疾患であっても症状に対しても安くすることでかかりやすくなり、6疾患に制限されることなく、鍼灸を皆さんからかかっていただいたほうが、私にとっても患者さんにとってもより有意義であると思って今は行なっています。

しかし、このころの思いには変わりなく、医療器官である鍼灸院は、保険を使える様になってこそ医療として一半世間から認めていただけるのではないでしょうか。

これから開業される鍼灸師のみなさんには、出きるだけ保険取り扱いをしていただきたいと思いますし、一部とはいえ、健康保険で鍼灸がかかれることを患者さんにも教えてあげてください。

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刺鍼時における押し手/刺し手/足の位置について

2010年9月17日

治験発表刺鍼時における押し手/刺手/足の位置について 東洋はり医学会では、近年このようなテーマでシンポジュームが時々行なわれ、そのつど押し手の重要性を認識させられ次からの臨床に生かせるように意識はして見ますが、日がたつにつれまた型崩れを起こし、漫然とに患者に刺鍼しているものと思えます。特に私は普段からの姿勢も悪く股関節膝関節が硬く腰椎仙椎が後湾し柔軟性が乏しいのですが、「姿勢を正して」という強い意識を持たないと、自然体では体をねじったような不自然な体制になっているのが常の状態です。 また、たくみ先生がよく言われるように「臍下炭田に気を置いて」とか、「かかとに体重がかかっているためそり加減になるから、つま先側に重心がかかるように」とのことを常日頃意識するようにしています。 しかし、良い姿勢を心がけようとすると、臍より上に力が入ったり、足を左右に大きく開き腰を落として刺鍼していると、長時間(ほんの30秒程度だが)もう骨盤部の筋肉や大腿内転筋などがつるようになり、体が震えてしまいます。今更皆さんに言うまでもありませんが、体のブレや上半身の力みは押し手を不安定2し、下圧がかかり脈が硬く数になる。左手ばかりに気を取られて無理に押し手を軽く浮かせれば、気が漏れて脈が広がりぼやけてしまいます。そのような経験を毎日繰り返しているわけですが、「良い刺鍼は良い姿勢で」ということになりますが、本会では押し手の手さばきにはかなり煩く指導をしていますが、術者の姿勢や負担のかからない刺鍼法についてなどは、その研究は未だなされず、ここの治療科の独時流となっているようです。そこで、先ほど「良い刺鍼は良い姿勢で」と書きましたが、「良い姿勢」とはどのようなものでしょうか?第3者が正面ないしは背面から見たばあいの術者の頚から背中腰までが真っ直ぐになっていれば良い姿勢だと思いますか。 その辺を考えながら、今日は刺鍼時の姿勢について、皆さんと一緒に勉強させていただきたいと思います。(よく頭の中で患者と自分との映像を思いながら聴いてね) 押し手の位置について 押し手の位置を決めるということは、簡単そうで難しいものです。何故ならば、常に同じものに、同じ場所に押し手を作り鍼をするのであれば、問題はありませんが、患者の体型(この場合身、長よりも横幅や厚みが関係します)。ベッドが固定性か、電動か。 治療室の広さとベッドの位地。 (壁に片側がくっついている治療室もあるかもね) そして、治療科の体型(特に、このばあいには横幅よりも身長/足の長さ/リーチの長さ)。 などなど。種々な条件で良い押し手という位置は変わってきます。結局、各個人個人で工夫をし、自分にとって良い押し手を研究開発していくしかありませんが、そういってしまうと、今日の話は進みませんので、一応条件を決めます。 ベッドの位地は両サイド上下とも術者が回りこめる。電動ベッドで高さ調節が出来る。患者はベッドからはばけるほどの人ではなく、女性で解剖学的基本姿位で仰臥しているものとします。 私の考える良い押し手の位置は、術者の臍よりやや下側に左手がくるようにするのが望ましい。そのためには、ベッドの高さを調節しますが、私の足の長さで言うと、最高まで上げたとき、自分の股間あたりにベッドの上ヘリがきますので、患者さんの厚みを考慮しても、その状態を基本としています。この場合足を肩幅程度開き、刺鍼するときは、腹部/大腿部前面の刺鍼では、ほぼ基本的な押し手の位置が作れます。しかし、本治法はあくまでも穴に取穴すれば良いというばかりではなく、本会では迎随により補瀉を区別しますので、そこで問題が生じます。 例 右適応側肺虚が主証のばあい 右太淵を手穴します。この場合、右サイドに立ち、正面に向いた状態では迎随にはりを倒すことは出来ません。 (腎虚で尺宅を取穴するばあいも同様)臍下圧し手にするためには、経に従って取穴したら、左足を前に出し、膝を6、70度は屈曲させ右足はやや後方に引き、押し手の位置位置が決まります。しかし、45度にはりを倒す場合には、上半身をやや倒さないと刺し手が届かず鍼が直刺に近くなりますので 、脈動の変化は思うように行かないばあいがあります。 また、ベッドに腰掛けるような形で右腿の上に患者の右手を乗せ取穴します。このやり方では、押し手も安定し刺し手も45度以下に倒しても楽に操作できますが、治療科によっては患者に尻を向けるのは、マナー的によくないと思われる人もいると思います。それに腕を抱え込む形手は、押し手の安定は得られますが、ついつい加圧がかかってしまい脈動は平になりますが、硬く気が漏れる場合があります。 例 右側の胆経/胃経/膀胱経を補中の瀉法で処理する場合は、光明/豊隆を取穴します。 臍下に押し手を作るためには、両足を左右に開き腰を落とします。もしくは、肩幅程度に開き、膝を8,90度くらいになると思いますが、屈曲をさせます。 足腰に自信のある人は、膝関節屈曲方をされるほうが迎随45度を保ちながら、押し手の安定を保つことも加納です。 左右に足を開く場合は、同じ角度に開き重心も均等になるばあいは問題はありませんが、初めにも書いたようにかかとよりに体重がかかったりどちらかの足に体重が乗りがちになりやすいため、意識してやられたほうが良いでしょう。 私は下腹部がベッドのヘリに当たるようにしています。 足がなんぎくなったばあいには左膝をやや 屈曲させて体重をかけたほうが押し手に及ぼす影響は少ないようです。 右足に重心があると左手拇指人指側に加圧がかかってしまい、良い脈にはならないばあいがあります。 次に右金門に刺鍼するばあいは、ベッドの右角に立ち、右足は前方左足は横に開くと押し手を、良い位置に構えることが出来ると思います。 例 左足太白/陰谷に刺鍼するばあいは、迎随45度を目標にするならば、これも左側にたっていては不完全と思われますので、右側に立ち、同様な方法で施術します。 しかし、患者さんから膝関節を曲げてもらったり股関節を外転/外旋するなどの、協力も必要で、関節の硬い人や腰痛/神経痛がそれで誘発される人には配慮しなければなりません。 特に太白の刺鍼は頻度も高く一見容易に見えますが、小指丘/中指/薬指/小指でピッタリ包み込むような形にするのは、難しく、その押し手の置き方一つで脈に及ぼす影響はかなり違うと思います。 刺鍼中意識して押し手を安定させようとしても、実際には押し手がゆれ脈が浮いたり沈んだりしているようです。 例 うつ伏せになれなくて右横外で表治法ほどこすばあい、 これは、直刺であれば押し手は反対になりますので問題はありませんが、が、腰部/仙骨部の刺鍼て下方/下内方/下 外方に刺鍼しなければならないばあいは、やはり鍼を倒しますので、ピッタリ押し手をくっつけるためには、足を前後にやや開き膝を曲げてさすことが要求されます。 それでも患者の背中と完全に向き合う形にはならないと思いますので、出きるだけ前に出した足に重心をかけ、背中が丸くならないように意識して行なっています。 しかし、やむをえないばあい、正確に鍼を硬穴/圧痛に当てたい場合には、術者が左(患者の腹部側)にきて刺鍼します。 以上工夫というほど目新しいわけではありませんが、いくつか上げてみました。 考察 治験発表ということで治験例を挙げながら発表するのが本筋ですが、適応側が合う人を例にしたとしても、説明するたびに、症例を換えなければならず、私も皆さんにもこんがらがってしまうため、省略させていただきました。 何故、このテーマを択んだかといえば、私は初めのころ8分鍼を使っていたこともあり、基本的には左足太白のようにあえて無理をして押し手を置き、姿勢を崩しながら鍼をして気が漏れるよりは直刺でも良いからしっかり押し手を作って鍼をしたほうが良いと考えていました。初めのころ前支部長からも「鍼の方向はあまり気にしなくていいよ」と言われましたので、最近までこのようにしていました。 しかし、本部のとき、谷内先生は「経に逆らっても良いから経絡治療は 鍼を倒したほうが良い」 といわれ、そのときは「そんなものかなー」と思っていました。実際の臨床でも 普段は自分が楽なやり方でやってしまうので、左側に立ち太白や陰谷に刺鍼していました。 しかし、よく脈診すると、確かに直刺であっても虚/実、浮/沈は整いますが、数/遅ににかんしていえば迎随に従ったほうが良いようです。 ただし、先ほども書きましたが、迎随をあまりにも意識すると、刺し手に気を捕られ、押し手の拇指人指側に力が入りやすく、また、反体側に立っているわけですから、腕を伸ばしぎみで重心も前屈みになりがちで脈が整わず、硬かったりぼやけたりすることもしばしばです。刺鍼技術がないためでありますが、案外意識してみると、正確には出来ていないようです。 刺鍼時はまず経に従って取穴し押し手 の位置をを決める。次に自分の足の位置を決める。次に腰を落として、そこで始めて鍼を持って行く。抜鍼して押し手を離してから腰を上げ足を戻す。 この流れがどのような状態でも、どの穴でも、どんな体格でどんな場所でも 無意識のうちに出来て、始めて人並の経絡治療科だと思います。 私のように意識してやっても美味く出来ない。関節が硬く刺鍼中に腿に疲労感を覚え、体を動かしているようではまだまだもんだいになりません。 どんなスポーツでも力仕事でもそうだと思いますが、刺鍼についても腰を入れて鍼を刺すことが大切で、それが出来ないと 気を動かす経絡治療とはなりません。 最後に基本刺鍼を指導することが最近多くなっていますが、皆さんも押し手に意識が行き過ぎていて、迎随になっていない人がほとんどのようです。基本刺鍼で出来ないことは実地臨床でやっていないということであり、臨床においては絶対に出来ていないと思いますので、もう一度確認して鍼を刺す努力をしてください。「逆らっても倒すほうが良いかどうかはその人の考え方や刺鍼技術のレベルによりますが、従って出きるときは必ず45度以下を目的に鍼を倒して刺鍼する癖をつけてください」。 2003年新潟支部定例会において 今泉 聡

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