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病症論のお話-その1

症状をどのように考えているの?

皆さんこんにちは。先回は病気の原因を東洋医学ではどのように見ているかをお話しいたしました。今回は病気によって出てくる症状をどのように捉えて治療に結びつけているかということをお話しさせていただきます。さあ、19枚目の扉を開けてみてください。

東洋医学では、病名によってその治療が行なわれるのではなく、特定の病症をもつ患者の症候群を1間的に処理して証(あかし※1)を立て、その主証によって治療を進めていきます。これを随証療法と呼んでいます。(※1:証を西洋医学的な表現で解りやすくいうと治療方針のこと)

1.症候と証

全ての病変を経絡の変動とし、その虚実となすこの医学では、患者の体に現れている多彩な症候群を全て経絡というカテゴリーによって弁別しさらにこれを陰陽虚実にわけて診断しています。

その結果、得られたものが証であり、目的とする治療法の内容を持った疾病の本体と考えて治療が行なわれています。

簡単にいえば、この証さえ立てられれば、どんな病名でもどんな症状でも、鍼灸は行なうことができ、一定の効果は上げられるということです。ですから、「まるまる病ですが鍼は効きますか?」とか尋ねられますが、聞いたこともないような難病であっても鍼灸の治療は出来るということになります。

2.陰陽虚実

この陰陽虚実を組み合わせますと次のようになります。

陽実証
陽実証とは邪気浅く表陽部にあり、これに対する体力も充実しているので、陽経に実大の脈を現し、熱して脹れ痛むとなっています。ギックリ腰を起こして、凄く痛がっている人や風邪を引いた時に高熱を出しやすい人などはこれにあてはまるかもしれません。
陽虚証
陽虚証とは、邪気浅く表陽部にあるが、これを追い出すべき体力が伴わないので病症は比較的緩慢で、微熱自汗して疲れやすく眠けをもようし、脈は全脈微弱であるとなっています。なお、横になりたくなるとか、睡眠が取れているはずなのに日中眠いなどという人はこれに当てはまるかもしれません。
陰実証
陰実証とは、病が固執となっていて陰分に入っているが、未だ体力があるので、劇症を現している場合が多い。疼痛目眩頑固な下痢、動悸などを伴う。脈は沈にして実時に楼を現すとなっている。

生来丈夫な人が冷えなどによって神経痛を起こして、それがなかなか治らなかったり、食あたりなどをして腹を壊しているようなときにはこれに当てはまるかもしれません。

陰虚証
陰虚証とは、病が古く陰分を侵しており、体力も虚損しているので、徹底的に補法を行なわなければならない証である。虚熱類、痩せない、慢性下痢下血などをきた、皮膚はこそうして脈は微細か、あるいは細数を現すとなっている。最も著しいものを陰虚火動の証といい病気の末期である。

癌患者の亡くなる数日前とか、長期にわたり寝たきりになっているような人はこれに当てはまるかもしれません。

気虚
気虚とは、精神的な疲れや呼吸障害などによって生気を失ったもので、皮膚こそうして緩み体力なく、脈は微弱で、つやと潤いがない、多くは脾肺の虚を主証とし悲愁して楽しまず、しょうき、耳鳴、動悸、喘息、頭痛等の症状を伴うとなっている。

これは、案外多くの患者さんに見られ、喘息の人、鬱病、統合失調症、アトピー性皮膚炎などの人もこれに当てはまるかもしれません。

血虚
血虚とは、血液体液の不足により来るもので、失血下血流産および食事の不摂生より起こる場合が多く、筋骨緩み脈は力なくしまりがない。肝腎の虚を主証とし、耳鳴、心悸、高進、眩運、腹痛、頭痛、便秘などの病症を現すとなっている。

これには血友病の患者さんや白血病、悪性不良性貧血のような患者さんが当てはまるのかもしれません。

以上が病症論から見た陰陽虚実を組み合わせての体質の証ということになりますが、このようにはっきりと大別されるものではなく、我々鍼灸師にとってもこのように診断出来、治療に結びつけられるケースはあまりありませんので、自分はまるまる証などと考えないでくださいね。

病症論は長いので今回はこの辺でお話を終わらせていただきます。