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現在の日本の鍼灸

21世紀、今現在の日本における鍼灸

さあ、3枚目の扉を開いてみてください。

先回までは鍼灸のおおよその歴史を覗いてきましたが、それでは、21世紀の今現在、日本における鍼灸の実状はどうなっているのか、少し解説を加えてみようと思います。

当院の治療法は東洋はり医学会で行なっている経絡治療(けいらくちりょう)と呼ばれるものです。

経絡治療の詳しいことは、後日このコーナーでもご紹介して行きたいと思いますが、簡単に言いますと、つぼに鍼や灸をすることによって経絡に流れる気/血を調整することで、体のアンバランスを正常に戻していく治療法です。

皆さんは鍼灸と聞くと、もともとつぼにするものではないの?と疑問に思われると思いますが、現実に日本で行なわれている鍼灸術の多くは、そうでもなく、穴を診察する場所(押していたいところ、凝っているところ)としてみていたり、鍼灸をする場所としての目安的な意味合いが大きく、我々が行なっているような気/血の存在や運行はあまり考えられていないようです。

そこで、皆さんが鍼灸にかかるとき、あるいは、かかってみたことのある人でも、何を基準に選択してよいのか非常にわかりにくいと思われます。

「あそこの鍼灸院の鍼と、ここの鍼灸は違うようだ」と言われることが良くありますし、患者さん以外の人の話を聴いていても鍼に対するイメージは様々なようです。

鍼灸術はたしかに多種多様であり、尚その治療院/治療家によって行なっているやり方は異なるのが現実だと思われますが、大きく分けますと、自立神経の働きを考えて鍼灸で刺激することによって、血流やホルモンの状態を改善させていく現代医学的な考えで行なっている鍼灸術(我々は刺激治療と呼んでいます)と経絡経穴を用いて気/血の流れを改善させていく鍼灸術(我々はこれを古典的治療と呼んでいます)に分けることが出来ます。

刺激治療には、両道楽(皮膚表面の電気抵抗を探索気で調べてそこに鍼灸術を施す方法)、灸頭鍼(鍼を体にわりと深めに刺してその鍼を持つ柄の部分に艾を差し込んで鍼の刺激と灸の温かみを同時に伝える方法)、パルス通電(灸頭鍼でわえに艾を差し込むが、それに換えて電極を繋いで電気を流す方法)などがあり、そのほかにも細かくはいろいろな方法をされている先生方がおられると思いますが、おおむねはこのような方法が主流のようです。

この刺激治療を行なわれている鍼灸院/治療家は鍼灸業の70%以上とされています。 それに対して、古典的治療には、中医鍼灸術(現在中国大陸で行なわれている鍼灸を活用してわりと太い鍼を使用する方法)と、経絡治療(古来中国から伝えられた鍼灸術を日本人に合わせて活用している方法)が在ります。

古典的やり方の鍼灸は全体的の2から3割程度と思われます。

よくテレビなどで鍼灸が取り上げられるときは、中国鍼を用いた中医鍼灸術が多く見受けられ、又治療院にかかったことのある人では、パルス通電(電気ばり)をされたことがあるとお聞きします。

いずれの鍼もわりと太目の鍼をある程度深く挿すものだと思われますので、体によっては痛みを感じたり、いわゆる鍼の響きが大きいものと考えられます。

我々の経絡治療では、細い鍼を接触程度に当てていますので、受けられた方が違いを感じられるのも当然なのかも知れません。

この説明くらいでは皆さんが鍼灸をしてみようと思われたときの選択する基準にはならないかもしれませんが、参考程度にしていただければ幸いです。

又、蛇足ですが、皆さんのイメージでは鍼灸をする人は目が見えなくて、マッサージもされると思われておられる方も大勢いらっしゃるとは思いますが、日本の現状では鍼師灸師免許を有する者は10万人を越え、その80%が健常者で、私のような視覚障害者は20%もいないのが実状ですし、あんまマッサージ指圧師とは免許そのものが違いますので、イコールでは在りません。

ただ視覚障害者の唯一の職業といっても過言ではなく、健常者の先生方と比較しても治療において差が出ることはないと思っていただいて良いと思いますので、その辺は皆さんのイメージに誤解があるようですので、付記させていただきました。

今回はこの辺で失礼いたしますが、解説に関しましては浅学非才なため、誤った記載があろうかと思われ、他の先生方にご迷惑をおかけしたかもしれませんがなにとぞご了承いただければありがたく存じます。

次回は、経絡治療の由来と沿革についてお話させていただく予定です。