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生理不順や生理痛の治療

生理不順や生理痛をはり灸で化改善

生理不順や生理痛の症例をご紹介いたします。文字背景にピンク色がある用語は、本文末尾に簡単な用語説明を記載いたしておりますので必要に応じてご覧ください。


1例-月経困難症:患者 22歳 主婦

来院時の状態:
頚から肩がこり、頭痛。体重が41キロと痩せ型でした。今までの経過としては自立神経失調症気味で、頚から肩が重だるく、頭痛・頭重、足の冷え、食欲不振、軟便、吐き気、頻尿、汗は出にくい、水分はあまり取らない、常に眠たく、体がだるい。
以前に卵巣脳腫により左側の卵巣を3ぶんの2ほど切ったが、排卵は起こっている。しかし、元来生理痛がひどく不順であり、この1年間はあったり、なかったりの繰り返しであるとのことでした。
体の状態は皮膚全体につやがなく、背中と足にザラザラした感じがありました。
お腹を見ますと、腹部全体がへこんで力がなく冷たく、水落あたりを押すと不快感があるとのことでした。へそ周りと下腹部が特に弱く感じられました。左の腿の付根辺りに筋張りがありました。脈を見ますと、浮いていて遅く弱く感じました。
治療方針(証)と治療経過:
病院からは胃薬と精神安定剤を処方されていて、それを減らさせることが治療のポイントと思いましたので、鍼治療は自然治癒力を高める治療であることを説明し、患者さんにも長期的な治療になることを踏まえて治療を続けていただくことにしました。
治療1回目は脾/腎相剋の証を立て、患者さんの元気を取り戻させる目的で手足のつぼに治療を行い、腹、頚、背中に浅く鍼をしました。
2回目の来院の際に、鍼治療後、遅れていた生理が始まった。3回目の問診で今回の生理は苦痛がなかったと喜ばれました。
治療4回目より背中に知熱灸を追加しました。10回目まで週3回程度治療を行ない、患者さんが遠方の方であることと、就職をするということで1週間に1回の治療に切り替えました。そのとき、生理でもないのに不正出血があったのでそれも治療をお願いしますと言われましたので、三陰交というつぼにお灸とシールの着いたはりを貼って帰宅してもらいました。

1週間に1回の割合で治療を続けていただき、生理不順については、周期も安定していきました。初診時に3種類の薬を1日3回飲んでいたものが、ほとんど飲まなくてよくなっていきました。

春くらいまで治療を継続し、数年後にもムチウチなどで来院がありましたが、生理の状態を尋ねますと、不正出血は起こらなくなっているとのことでした。


2例-月経過多:患者 30歳 主婦(2子の母親)

来院時の状態:
全身倦怠感出産後胃痛、頭痛、肩凝り、寝付きが悪い。身長166センチ体重50キロで痩せ型。
問診すると、徐脈で、最近は胸が苦しく、睡眠は寝付きが悪く寝た気がしない。立ちくらみ・動悸がある。食後胃がつかえる。手足が冷たく、足が冷える。頻尿。風邪を引きやすい。出産前は、生理が28日周期であったのが、出産後は20日くらいで生理が始まり、終わるまでに1週間以上かかるとのことでした。
体の状態は、血圧は123の65で、脈拍は47でした。皮膚は薄くて冷たく、乾燥しやすい。腹は力がなく、上腹部が硬い。脈を見ますと沈んでいて遅く弱い。
このような患者さんは、東洋はりで考えますと、上焦の気の巡りが悪くて、手足を暖めるだけの力がないためこのような症状が起こりますので、この不足している気を巡らせることを目的と出産前の28日周期に生理を戻すことを目標に行なうこととしました。
治療方針(証)と治療経過:
治療1回目は肺/肝相剋調整という証を立て、手足のつぼにはりを行い、頚肩を中心にはりを行なった後、手足のつぼに奇経灸を行ないました。
1週間後2回目の治療を行ない、次からは排卵日と思われる時季と、生理が始まる前に来院してもらうようにしました。

このような治療を4回ほど続けてもらい、動悸息苦しさが取れ、生理も27日周期に戻りました。ある程度生理の周期も安定してきましたので、排卵日とは関係なく月3回の治療に換えたところ、次の生理は25日とやや生理が早く始まることもありましたが、以後は安定して生理が来るようになり、眠れるようにもなりました。


3例-多発性月経:患者 37歳 会社員

来院時の状態:
頭痛/全身の冷え、今までの経過としては、3年前から偏頭痛がひどく、後頭部から頚背中にかけて緊張があり、手足が冷えて吐き気もある。
小学生のころに扁桃腺を手術。生理不順と痛みのため、ホルモン剤を服用中とのことでした。身長160センチ体重45キロやせ方。
問診で頭が常に重く痛むので、頭痛薬を1日1回は飲んでいて、効かないと2回も飲むが効果はない胃がつかえる。胸苦しい。手足が冷え、特に手が冷たくて自分の体を触るのも嫌である。とても寒がりで風邪も引きやすい。生理は月に2回もあって、始まると1週間くらい少量ずつ続くとのことでした。
体の状態は手足のかなり上の部分から冷たく、頭を軽く触っただけで痛がっていました。腹は力がなく上腹部が特に弱く感じられました。脈を見ますと浮いていて速く弱い。
治療方針(証)と治療経過:
このような患者さんは薬を長く服用し、尚且つ依存状態にありますので、はりで症状を軽減させ、出来るだけ薬の服用を控えていただくようにして治療を進めていくことにいたしました。
治療1回目は肺/肝の和法という証を立て、手足のつぼにはりを行なった後、頭・後頚部・背部にはりを浅く行ないました。
週2回くらいの間隔で治療を続けてもらい、きけい灸を加えながら、腎本証に換えるなど証をその都度工夫して行なったところ、7回目で頭痛が減り、安定剤を服用しなくても眠れるようになったとのことでしたので、排卵日の時期を中心に治療計画を立て継続いたしました。

治療半年くらいで不正出血は治まってきて、頭痛薬はほとんど飲まなくても良くなりました。健康管理のため1年半ほど治療を行ないました。

このように生理不順といっても量が少ない人、いつまでも終わらない人、年に3、4回しかない人など症状は様々です。いずれにしても外に排出されなければならない血液が体に停滞していることはあまり好ましい状態ではありませんので、このような症状でお悩みの方は、はり治療で血流改善をお勧めいたします。


4例-生理不順:患者 25歳 会社員

来院時の状態:
むくみと肩こりがもっとも強く、そのほかの症状として、目覚めやすい、頭が重い、手足の冷え、足のむくみ、生理不順などがありました。
体の状態は、腹部は下腹部が冷たく弱い。脈は沈んでいて弱い。肌は滑らかである。
治療方針(証)と治療経過:
腎・脾の和法という証を立て、右復溜・尺宅に補方。左陰陵泉に和法。胃と小腸に関係する経絡を調整し、頸から背中にかけてはりをした後、かかとの質眠というつぼに温灸をおこないました。
治療後楽になり、帰りはバスに乗らずに歩いて帰宅されました。
甘いものを食べ過ぎることや体を冷やさないように気をつけてもらうように指導いたしました。2回目の治療のときは整理中で治療後、すっきり終わったとのことでした。
次の生理はレバー状のものが出たとのことでした。尿が少なくなり濃度が濃くなったといわれましたので、肺虚肝実証という証に換えておこないました。

初診時から数えて3回目の生理は順調に終わりました。生理中の時に治療を来られたときや生理前1週間以内の時には、三陰交というつぼに温灸を加えました。

4回目の生理もすっきり終わることが出来ました。証はその都度症状に応じて変わりましたが、足の冷たさや下腹部の冷たさも取れ、のぼせる感じや眠りも深くなってきましたので、24回6ヶ月で治療を終了いたしました。


5例-生理痛:患者 33歳 会社員

来院時の状態:
頸から背中が凝り、頭痛がもっとも強く、他の症状としては、眠れない、頭が重い、咳き込む、喉の渇き、生理痛、頚肩凝り、眼の疲れ、睡眠不足、立ちくらみなどがありました。
体の状態は、腹部は力がないがやや硬い。脈は沈んでいて弱い。皮膚は滑らかでつやあり。
治療方針(証)と治療経過:
脾虚肝実証という証を立て、右太白・大陵に補法。左太衝に瀉法をおこないました。頸を中心にはりをした後、肩と背中の膈兪というつぼに温灸をおこない、足の冷えと全身の気を円滑にするため左右の足三里というつぼに温灸をおこないました。
証はおおむね脾虚証を中心に続け、6回目ころより頭痛、肩こり背中の張る感じが軽減されてきました。
7回目の治療より左右の三陰交に温灸をおこない、生理時には適応側を決めてえんぴしんというシールのついた鍼を貼って帰宅してもらいました。

8回目より生理痛を中心とした治療に切り替えて生理時1回、排卵日と思われるその前後の日に1回、月に2回、来院してもらうことにしました。

生理そのものは安定してあり、生理痛も以前よりはかなり楽になってきたとのことでした。平成23年1月現在、治療継続中です。


用語説明:

証(あかし)
東洋鍼灸治療では、治療を進めるにあたり、証(あかし)を決定します。証とは、体のどのつぼに鍼やお灸をするのかを決定する、治療方針のことです。
きけい治療(灸)
経絡治療の中の一つの治療方法で手と足からそれぞれ一つずつ、つぼを選んで組み合わせ、鍼の材質や灸の数に差をつけることによって、プラスとマイナスの働きを利用したもので、水の流れにたとえると、充満した水を溢れさせないために、排水路に流してあげる目的で行なわれる治療法です。

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