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ぎっくり腰を含む急性腰痛症の症例

はり灸で急性腰痛症・ぎっくり腰を改善

急性腰痛症・ぎっくり腰の症例をご紹介いたします。文字背景にピンク色がある用語は、本文末尾に簡単な用語説明を記載いたしておりますので必要に応じてご覧ください。


1例:患者 女性 63歳 美容師

来院時の状態:
急性腰痛。この患者さんは第5腰椎の分離がある人で3、4日安静にしていても治らず、当院を紹介されて電話がありました。通院出来ないというので、往診を行ないましたが、ベットから起き上がることもままならないほどでした。
脈は沈んでいて遅く弱く、腹はへそより下側が弱くなっていました。何年に一度かは急性腰痛になるそうですが、このようになったのは初めてとのことでした。
治療方針(証)
証は免疫力を高めることと体の元気を増す目的(肝/脾相剋調整)という治療方針で右膝内関節にあるつぼ/膝後ろ側にあるつぼに補法。大腸/小腸/胆の経絡を調整しました。

腹/頚/背中腰に刺鍼後、右足外かかとの下側にあるつぼの手の小指にあるつぼにきけい灸を行ないました。

翌日も往診しましたが、大分楽になったということでおなじような治療を行ないました。消化器の働きがおかしくなっていましたので、証は免疫力を高めることと消化器の働きをよくする目的(肝虚脾実証)という治療方針に変え行ないました。。

翌々日は自分で通院されほとんど良くなりましたので、治療を終了といたしました。


2例:患者 女性 57歳

来院時の状態:
急性腰痛。この患者さんは子供のときに左股関節を脱臼して慢性的な腰痛があった人で、孫のこもりをして腰を起こし、はうようにして来院されました。
患部には腫れと炎症があり、ベットに上がるのも寝返るのも切なそうでした。脈は浮いていてややつよめ。腹は大副(臍より上側)が冷たく弱くなっていました。
治療方針(証):
証は、消化器の働きと免疫力を高める目的(脾/肝の和法)という治療方針で右足の親指の内側にあるつぼ/手首の関節の真ん中にあるつぼに補法。左足の親指と人差し指の間にあるつぼに和法(停滞している気を流す鍼のテクニックの一つ)。胆/胃/膀胱に関係する経絡を調整しました。

腹/背中/腰に刺鍼後、痛みのある場所より少し離れた冷たいところに知熱灸を行ない治療を終わりました。翌日来院して、まだ痛みがあまり取れていなかったことと、それでも動けるようになったらしく、今日は草取りをしてきたということを言われました。

証を全身に気を巡らすことと体の緊張を緩和させる目的(肺虚肝実証)に変えて、右手首の外側にあるつぼ/右足の親指内側にあるつぼに補法。左足の親指と人差し指の間にあるつぼより瀉法を行ないました。

後は昨日とほぼ同じ治療を行なった後、左小指にあるつぼ/足の外くるぶしの下側にあるつぼにきけい灸を加えました。

翌日も来院され、ほとんど楽になったとのことでしたので、完治として治療を終了いたしました。


3例:患者 男性 49歳

来院時の状態:
左側の腰の痛み。この患者さんも慢性的な腰痛があるということと、長時間座り仕事をしている人で、右の頚から腕にかけての痛みと痺れもありました。
脈は沈んでいてやや強め。腹は上下ともに冷たく、左の腰からお尻の骨の外側にかけて、こりが多くありました。上向きで寝られないくらいの腰痛でしたので、まず応急処置として左横向きに寝てもらって腰部と尻のこりにたいして刺鍼後、腰椎側に温かみを感じたら取り去る灸。
治療方針(証):
証は、全身の気をめぐらすことと、体の緊張を緩和させる目的(肺虚肝実証)という治療方針で右手首の外側にあるつぼ/右足の親指の内側にあるつぼに補法。左足首の内側で内かかとのやや下側にあるつぼ(ちゅうほう)より瀉法。
膀胱関係する経絡を調整しました。右肘関節外側で曲げたところにあるつぼ(きょくち)にしご灸を10回すえました。

翌日来院され腰が抜けるような感じは治まってきたということで、証は同じでしたが、適応側(先にはりをする側のこと)を左に換えて行ないました。左右の足の外踝の下にあるつぼ/手の小指にあるつぼにきけい灸を加えました。

翌日、翌々日と来院され、ジンジンするような痛みは残っていますが、かなり楽になっていて右の腕のしびれは、ほとんど無くなったとのことでした。

3回目は肺虚肝実証で行い、4回目は肺/肝相国調整を行ないました。左の申脈/後谷のきけい灸は継続して加えました。翌日から京都旅行に行かれましたが、その後来院されたときに尋ねると、痛みもぶりかえすことなく旅行にすることができたとのことでした。現在も腰痛予防のため来院中です。


用語説明:

肝経の肝
肝経の肝は現代医学で言う肝臓の働きだけではなく、痛みや痺れなどの症状があったり、ウイルスや細菌に感染するとそれを退治しようとして体を外的から守る働きのこと。
証(あかし)
東洋鍼灸治療では、治療を進めるにあたり、証(あかし)を決定します。証とは、体のどのつぼに鍼やお灸をするのかを決定する、治療方針のことです。
きけい治療(灸)
経絡治療の中の一つの治療方法で手と足からそれぞれ一つずつ、つぼを選んで組み合わせ、鍼の材質や灸の数に差をつけることによって、プラスとマイナスの働きを利用したもので、水の流れにたとえると、充満した水を溢れさせないために、排水路に流してあげる目的で行なわれる治療法です。
しご灸
しご灸とは、経絡はそれぞれ盛んに働いている時間があり、それを治療に結びつけて行なう鍼の治療の一つ。