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新潟市の泉心道鍼院よりメッセージ

治験発表夜尿小の症例

2011年3月24日

  治験発表夜尿症の症例

 普通の発達過程においては、2から3歳でオムツが取れ、夜おしっこをしてしまうというようなことはなくなりますが、最近の子供さんでは生活環境も変わり、食生活、アレルギー症状、紙オムツの使用などの影響で、なかなかおねしょが治らないという子供さんが見受けられます。本院でもこの1年間の間に夜尿で困っているとのことで、来院された患者さんがおられましたので、ご紹介いたします。

  東洋医学における尿の作用気所
経絡治療においては尿の精製と排出は三焦/腎/小腸//膀胱が
大きく関係し、最後に肺の気の力によって排出されるものと思われます。
そこで、簡単に各臓腑の役割を説明します。
  三焦は、火性で第13椎に着き、上焦/中焦/下焦に分かれて栄衛の精製伝与および司る循環系統となります。上焦は横隔膜より上を言い、働きは霧のごとくといわれ、治療点は、だんちゅう。中焦は横隔膜より臍までを言い、泡のごとくといわれ、治療点は天数。下焦は臍以下を言い、溝のごとくといわれ、治療点は陰交となります。口より入った五味は中焦胃の部において、吸収された栄ハ下焦においてくんじょうされた衛と合して先天の元気を腎の臓より受けて上焦にいたり心の
臓において赤い血になり天空の気と合して経脈に入り、全身を巡ります。
この栄衛循環は心包によって支配されています。
  小腸は、火性で背の第18椎に着き、上口は噴門噴門といい、下関穴の部で胃と連なり16曲して欄門において大腸につらなる細い管であります。
胃にてふジュクされた五味は小腸に入り、しだいに胃の気が吸い取られ水分と固形物とに分かれながら、欄門(水分穴)にいたります。
  腎は水性で背のだい14椎に着き、父母より受けた先天の元気を司るところで生殖作用および生殖器を司りその生気は栄衛に注入され五体に巡って生命力の根源となっています。又、小腸/膀胱ともに尿の排泄を司っています。
 膀胱は水性で背の第19椎に着き、中局
穴の部にある嚢であります。その上口は水分穴にあるといわれているが、それは治療点としての見方のようです。小腸より分かれた水分はこの部により膀胱に染みとおり蓄えられて後時を得て尿として排泄されます。この排泄のさい、肺気の力が大きく関わってきます。以上は尿を作るために関係している臓腑を臓症論から見たものですが、夜尿をしてしまうということはこの働きが正常になっていないためと考えられ特に陰の代表である水経。陽の代表である火
経のアンバランスが大きな原因であると考えられます。
 次に症例に入ります。
治療をするさいに注意していることは、
1.発育不全の有無。
2.アレルギーなど機能の有無。
3.食事の状況。
4.生活のリズムと睡眠の状態。
5.そのお子さんの性格。
6.親御さんの子供に対する接し方。
などを問診しながら観察しています。

  症例一
患者女児3年生
初診2009年7月4日
主訴 夜尿。
 現病歴 生まれてからほぼ毎日夜尿をしてしまう。
昼間も間に合わなくて漏らしてしまう。専門医を受診し膀胱型(膀胱が小さく尿を貯める容量が少ない)と診断。反射とうには異状はない。
そのほかの症状は眠りすぎる、腹痛。時々体が痒い。
既往なし。食事も甘いものお菓子などは控えているとのこと。  切診
皮膚の状態は体全体は暖かい。背中にざらつき在り。
  腹診
下腹部が突っ張っている。膀胱は硬く小さい。
 脈診
脈状は浮やや虚。
比較脈診肺脾虚小腸はややあり。
 治療法
1回目肺虚証で、円鍼で右尺宅/右陰陵泉に補法。小腸経左しせいに瀉法。腹部の中局/水分/関門にてい鍼で補法。大 椎/命門に補法。背部を円鍼で上から下に左右2回ずつ撫でる。
中局に温灸、左膀胱経の至陰穴にぎんりゅう貼付。
 2回目 治療直後に軟便となるがその後は特に異状はなし。右肺虚肝実証で、水分穴は鍼をしないで、中局に温灸、中局/左至陰にぎんりゅう貼付。
4回目で夜尿がない日が出てきて、左至陰穴のぎんりゅうは取りやめる。証は肺虚肝実証。
7回目 夜尿が又続き始める。ぎんりゅう貼付を取りやめる。
11回目 8月三日ころより夜尿は朝6時ごろにあるようになってくる。しかし、背中臍周りに湿疹が出来始める。証は肺虚肝実証。
左曲池に温灸を加える。その後2回証を脾虚肝実証に換え、後は肺虚証もしくは肺虚肝実証で治療継続の結果、8月21日で1週間以上夜尿がなくなっていたので、週1回の治療で経過観察をして、10月に入っても
全く夜尿はなくなりましたので、25回で完治としました。

  症例2
患者男児6歳
この患者は1歳のころより疳の虫で治療。その後は風邪や熱を出しかけると本院で継続治療をしていたもので、来春から小学校へ上がるので夜尿を治したいということで治療を開始したものです。
 再診 2009年8月24日
主訴 夜尿。
夜尿以外の症状は鼻つまり眼やに。落ち着きがない。
 腹診 腹部は下腹部が硬く小さい。中局穴の左右に横に走るような筋張り。
脈診 脈状は浮やや虚。
証は肺/肝相剋。中局に温灸、左暴行癒/至陰にぎんりゅう。
 2回目で、1回目の治療後から三日夜尿なし。
週2回の通院で9月4日から10月六日の治療まで夜尿が0となった。そのため、週1回の治療に換えた所、
しだいに1週間に1回、もしくは2回の夜尿をする日が出始める。証は肺/肝相剋が中心で、咳や熱、落ち着きがない状態があるようなときは、肺虚肝実証で行なっている。病状は1週間全く夜尿がない状態があったり、3回くらいあるなど安定していない。ぎんりゅうはそのときの状態で貼付するかどうか決めている。
この4月より小学校に入学し、家も引っ越したが現在も週1回の通院中で、3回の夜尿がある状態です。
腹の状態は硬さも取れ、手足も暖かくなっていますが、落ち着きはあまりない状態です。証は時々脾虚証に換え膀胱経を補う治療を行なっている。
4月末現在41回。

  症例三
患者女児9歳
初診2009年9月七日
主訴 残尿感。
 現病歴 最近おしっこが気にかかり我慢していたりなかなかトイレから出られない。緊張しやすいタイプで人見知りもある。

腹診 腹は下腹部が冷たい。
脈診 脈状は沈やや虚。
比較脈診 肺脾肝はややあり。
。体の状態は手足に汗をかいていて、冷たい。皮膚のこそうはない。
その他症状は特になし。既往もない。

 1回目は肺虚肝実証で円鍼で右肺/脾を補法。左肝経を瀉法。てい鍼でちゅうかん/関元/関門に補法。背中大椎/至陽/命門に補法。
背部を円鍼で撫で、下腹部の冷たい部に温灸、中局にぎんりゅうを貼付。4回目まで肺虚あるいは肺虚肝実証。少しずつ気持ちも落着きトイレに行く回数も少なくなる。5回目から肺/肝相剋。ぎんりゅうは取りやめる。
7回目から週1回の通院で、トイレに行く時間が3時間に1回となり、下腹部の冷え、手足の汗も改善されました。
脈状も浮正実となりましたので、2ヶ月11回で完治としました。

  症例4
患者男児4年生
初診 2010年2月二十日
主訴 ほぼ毎日の夜尿。
現病歴 3年ほど前から専門の夜尿治療を受けていた。出来るだけ我慢をして膀胱の容量を大きくさせる治療を受けていたが、本人が切なくて取りやめた。既往は喘息、アトピー性皮膚炎。
現在は症状は治まっている。
その他は夢を多く見る。甘いものを好む。
腹診 腹は下腹部が硬く膀胱部が硬い。 右恥骨上際にこうけつあり。
脈診 脈状 浮ややあり。
比較脈診 肺脾虚肝実。胆ややあり。
体の状態は皮膚はややこそうぎみ。右膀胱
癒にこうけつあり。 1回目 ごう鍼で左太淵に補法。右対衝より補中の瀉法。胆経を円鍼で瀉法。腹部のこうけつと、右膀胱癒のこうけつに深瀉浅補。背中に円鍼。膀胱癒中局に温灸。週2回のペースで通院してもらい、4回目の治療後、自分で起きてトイレにいける日が出はじめる。夜尿がある日でも朝型あるようになってきました。証は肺虚肝実から肺虚/腎虚で治療。
脈症より膀胱経の補法を行なったり、脾虚本証で行なうこともあった。
下腹部の温灸はそのつど虚所見に対して行なっている。
継続の結果、夜尿があっても少量で下腹部の硬さも取れ2ヶ月21回でほぼ良いとして、現在は週1回の経過観察中です。

夜尿症の治療のポイントとしては、
下腹部の冷たさ硬さを取ることや食事の状況を随時確認すること。
通院のさせ方などが転機
ノ良し悪しを決めると思われます。膀胱経の使い方も重要と思われます。以上参考にしてください。
    2010年5月 新潟支部定例会において 広報部 部長 今泉聡

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