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新潟市の泉心道鍼院よりメッセージ
治験発表楽にすることによって健康管理としての鍼治療を続けさせられた症例
2010年7月22日
楽にすることによって、健康管理としての鍼治療を続けさせられた症例
初めに。
我々鍼灸院に来院される患者の多くは、何らかの苦痛を持って来院されるものである。しかし、数回の来院により主訴の改善もしくは、愁訴の軽減により「治った」ということで来院されなくなったり、暫く中断するケースがほとんどである。治療科としてある程度経験をつむと、その割合も少なくなり、「健康管理としての鍼治療」(常連客)が多く診られるようである。先輩の皆さんの話を聴くと、「健康管理の鍼」の患者が半分くらいはいないと鍼灸院ははやってこないとか、反面数十回来院し半年余も越えて継続させても「楽になった」と患者に認識されず、それ以上の継続はかえって治療院のマイナスイメージになるとの考えも聞く事がある。
これについては、ここの患者の病歴や病体、治療科のスタンスというものもあるので、ここでは記述しないが、「東洋医学は未病を治す」予防医学としての鍼治療という観点に立てば、「悪いから来た」ではなく「悪くなると困るから来た」と患者から来院してもらえる鍼灸院、鍼灸かとしても目指していかなければならない目標だと思う。
症例1
患者女性45歳主婦
初診平成11年11月12日
主訴
腰痛/左坐骨神経痛
現病歴
20年ほど前に椎間板ヘルニアと診断され、以来腰痛や足の痛みがあったが、そのつど整形を受信して治っていた。今回も9月ごろにいためて整形外科で電気治療をしているが治らず、左の大腿部内側に痛みがある。特に、起き上がりの伸ばすときに痛みがある。パートでたち仕事であり、長くたっていると腰も重くなる。
望診
中肉中背で栄養状態は良。
聞診
話しかたはやや暗くゆっくり話をする。
問診
食欲はあるが、やや便秘気味で、二日、三日出ないことが多い。足が冷えやすく暖かくしているが、徐々に他のところは暖まるのに足は一向に温かさを感じない。
その他、睡眠/血圧/排尿の回数は異状なし
切経
皮膚は滑らかでつやがあるが、冷たく自覚症状どおり足は氷のようである。腰椎の後湾はややあるようだが、第何番目かのヘルニアかは分からない。Slr、ボンネットテストとも左の臀部が突っ張るが陰性。
腹診
全体的に冷たい虚腹で特に小腹が虚している。
腎/肺/脾の見所が虚。
脉診
脉状診
沈遅にして虚
比較脉診
左手しゃくちゅう沈めて腎最も虚、浮かせて膀胱虚。右手すんこう沈めて肺虚、
かんじょう沈めて脾虚。左手かんじょう浮かせて胆ややあり。
他は平位と診た。
証決定
病症の経絡的弁別
立っていると疲れる、伸ばしたときの腰の痛み、足の冷え感は腎水経の変動。
大腿部の内側の痛み、便秘、食欲ありなどは脾土経の変動。
ゆっくりとした鼻仕方は肺金経の変動とした。
。以上の事柄により腎/脾相剋調整の証とした。
予後の判定
ムノブの所見、腰臀部筋の緊張度、腰椎の状態などの観察では、慢性的な病歴とはいえ、
坐骨神経痛の初期症状であるので、数回ないし10回程度の鍼治療で改善は可能と思い、そのことを患者に告げて治療を行なった。
治療および経過
銀8分2番鍼にて右復溜/尺宅/左陰陵泉に補法を行い、見脉すると脉が中位にまとまり平になっとてきたので、陽経を
再度確認し膀胱に虚、胆にけんと思われる虚生の邪を触れたので、左きんもんに補法。左光明よりけんにおうずる補注の瀉法を行なった。再度見脉すると胆の邪もとれ脉が全体的に力が出たので、表治法に移った。
表治法は特に左のムノブナマゴムヨウ所見にたいし、静に刺入し、過度の刺激にならないよう鍼を動かして抜き鍼。腹部、ナソ部、背腰部に2から3箇所刺鍼後腰椎部2箇所、湧泉に3層ずつ温灸を行なった。見脉すると脉の崩れもなく患者も体が温まってきたとのことであったので、初回の治療を終え、後2回は三日おきに治療をすることにした。
2回目11月16日
問診づくづくするような痛みは少し和らぐ。
3回目11月19日
問診楽になり曲げ伸ばしの苦痛がなくなった。
4回目11月22日
問診動き始めに腿の後ろ側に痛みがある。
坐骨神経の経路上にようやく痛みが出現したのは、症状の変化であり、改善の兆しと思い患者には説明をする。いずれも腎/脾相剋で行なう。
5回目11月26日
問診お尻が突っ張り、足の痛む場所が段々下がってきたようだ。
治療は脾/肝相剋で左の仙腸関節部に温灸、左しんみゃく/ごけいに奇経灸を加える。
後、1週間に1度の感覚で治療をしていくと6回目7回目あたりでは、着衣着脱動作や挨拶などでかがむと尻から腿の裏側に痛みが出るとのことであったが、
8回目12月17日ごろより、お尻の痛みは残っているが、起き上がったときに腰や足の痛みはなくなった。
9回目腰の痛みは半減した。
10回目12月27日には、ほとんど腰痛もなくなったとのことであり、腰痛/坐骨神経痛の治療は終了とした。
患者には「貴方は体質的に足の冷えがあり、それが引き金となっていろいろな症状が出るのだから、冷えを改善させなければならないので、つきに2回程度はりを続けるように」と指導した。
それから半年以上たった現在も、鍼治療を継続していて、足の冷えもかなりらくになったとのことである。
治療はほとんど腎/脾相剋で行なっている。
症例2
患者45歳男会社員
初診平成11年8月五日
主訴
肩凝り
現病歴
肩凝りと腰痛があり眠りが浅くなると肩から背中にかけて凝る感じがあり、特に左側が悪い。
望診
小柄痩せ型で胃下垂型。
聞診
声はわりと高く話しかたがかけふさんのような特徴でうなる感じ。
問診
わりと冷えやすくふくらはぎがつったり、お腹が張ったりする。
排尿排便はすっきりせず、睡眠は浅く疲れやすい。
頭痛/目眩/食欲/血圧などは異状なし。
切経
ナソ部は斜角筋ぶ中/後部から項頚部/左肩甲骨内縁部にナマゴムヨウ所見。皮膚がざらつきしまりがない。
腹診
平べったくやや硬めで、大腹小腹とも弾力なし。
脉診
脉状診
沈遅にして虚
比較脉診
左手しゃくちゅう沈めて腎虚、浮かせて膀胱虚。右手すんこう/かんじょう沈めて肺/脾虚左手かんじょう浮かせて胆ややあり。
病症の経絡的弁別
肩凝り/眠りが浅いは肺金経の変動。
疲れやすい/胃下垂型腹張るは脾土経の変動。
ふくらはぎがつるは肝木経の変動。
うなるような話しかた、腰痛/下肢の冷えは腎水経の変動とした。
証決定
腎/肺/脾いずれを主証にするか迷ったが、脉状および比較脈診において相生関係より腎/脾相剋の証を立てた。
予後の判定
体質的には腎虚体質ではないと思われるので、本治法を繰り帰し行なうことで、本来の体質に戻すことを心がけた。
治療および経過
適応側は左側に凝り感が強く臍の傾き、中脉の充実度とうから右とした。
銀8分2番鍼にて右復溜/尺宅/左陰陵泉/左金門に補法。光明よりけんにおうずる補中の瀉法。表治法は、ナソ部の所見にたいし、深瀉浅補。後は腹部背腰部に数箇所刺鍼後、神堂/命門、左右湧泉に温灸。膏肓に円皮鍼を貼付し治療終了。
腎/脾相剋で3回目まで治療を続け4回目8月16日背中の痛みは大分楽になったが、2時間ほど前に頭をぶつけ左の頚筋を伸ばしたということで、
見脉すると腎の虚は触れず、脾が最も虚し、肝が実していたため、脾虚肝実証で行なう。
後、2回ほど脾虚肝実証で行なう。
7回目9月二十日より腎/脾相剋に戻し治療をするが、しだいに肩凝り以外に目の疲れや風邪をひいたのか喉がいがらっぽく鼻もむずむずするなどの症状が現れた。
10回目10月19日同じような症状を訴えるので、注意ぶかく脉診すると肺/脾/肝/が虚し大腸に虚生の邪、胆に虚生の邪を触れ腎の虚は目立たないので、肺肝相剋にて治療。
後、十日に1度の感覚で治療を続け、
肩凝りや眼の疲れは残っているが、眠りも
深くなり倦怠感も徐々に改善されたとのことで、
平成12年2月八日にていったん治療を終わりとした。
現在は12年5月22日に再来院し継続中であるが、患者さんは「やはりはりを止めるとあまり調子が良くないようだ」と言って来院されたものである。
考察
この二つの症例は内容は多少異なる点もあるが、治療の進め方においては類似しており、初めの5回くらいまでは三日に1度くらいの間隔で、後1週間に1、十日に1と私の指示通り患者が来院し10回前後には主訴の改善が見られたことで、それが結果として患者の信頼を勝ち取ることが出来、継続させられている理由だと思う。特に2例目は考察するに途中からは誤治であったにもかかわらず、再び来院されるにいたったのは、
術者ばかりではなく「正しい認識は体験によってのみ体得される」とて鍼の良さを患者自身が理屈ではなく、体で覚えた結果だと思う。ややもすると健康管理としての鍼治療はまんねりかして同じ証で同じ取穴、同じ手方で治療を進めがちになるが、臨床は生き物であり、病気は常に変化するものと肝に銘じて取り組んでいきたい。
2000年新潟支部定例会において 今泉聡
追記
この症例は開業4年目の治験を本にしたもので、発表は翌年の夏ごろ行なったものである。
開業3年目くらいは私自身も無我夢中で行い、来院される方も鍼灸院が出来たから行ってみようという人も多く患者さんの来院が安定しないものである。しかし、そのころを過ぎると初診患者さんの来院が少なくなる一方、継続患者さんがしだいに増え、平均来院回数も上がってくるころであったと思う。
この症例の患者さんはその後も暫く来院され、他の症状でもかなり通院されました。
ある程度主訴の改善が見られるまでには回数がかかるので、我々は1回でも早い段階で楽にして上げることを目標にしていかなければならないし、患者さんにも良い傾向になるまであるていど我慢してもらうよう説得することが大切になると思います。それから先は、患者さんと術者の信頼関係ということになりますので、皆さんも健康管理とはならなくても、悪くなったら又きてもらえる鍼灸院を目指していって欲しいです。
くれぐれも気をつけてください
2010年7月19日
水の事故が相次いでいます
前略。三日連休の最後の日ですが、とても暑い日が続いていて、各地で水の事故が相次いでいます。皆さんも出かけるさいは、充分気をつけてください。暑いとなんだかいらいらしたり、普段なんともないことでもうっかりミスをしてしまったりで、ちょっとしたことが大きな事故に繋がってしまうようです。楽しく良い思い出になるはずの海水浴で亡くなったり大きな怪我をしてしまうと、一瞬にして人生そのものが変わってしまいます。掛け替えのない大切な命です。失ってから後悔しても取り戻すことは出来ない大切なものです。
親御さんは出来るだけ子供さんから眼を離さないようにしてください。子供もお父さんやお母さんから離れては駄目ですよ。
それでは、又後日にお便りします。
睡眠は大切
2010年7月17日
今日から三日連休ですね。
前略。今日から三日連休です。泉心道鍼院は土曜日は営業しているため、2連休ということになりますが、今日は土曜日ですが、予約の状況がめ巡りあわせか、いつも来てくれる人が昨日来院されたりもして、今日は午前中暇になってしまいました。
今日もとても暑くて朝散歩へ行ったのですが、汗ばんでしまいました。ワンチャンも暑がっていますよ。夏になると眠れないとか寝た気がしないなどと訴える患者さんがおられますが、私は今年の夏は今のところ、冷房のおかげもあってか、ぐっすり眠れています。眠りすぎて、朝起きるのが、遅くなりがちです。皆さんはよくねむれていますか?
睡眠が深いと良いようです。
やはり、疲れを残さないと1日が快適です。
それでは、またお便りします。
治験発表鬱病
2010年7月15日
鬱病
高等部今泉 聡
患者55歳女性主婦。
初診 平成10年5月27日
主訴
頭痛と倦怠感。
現病歴
20年ほど前に家庭内のいざこざにより精神的に不安定となり、胸から背中にかけて苦しくなり、時々激痛が走るようになった。更に、頭痛が出るようになり入院した結果、胸から背中の痛みは取れたが、頭痛は残りほぼ毎日のように後頭部から頭頂部にかけてずきずきするような痛みがある。血圧はやや高めで、肩凝りと頚の緊張があり疲れやすい。
問診
医者では鬱病と診断され、こう欝剤/精神安定剤/血圧の薬とうを出され服用している。
食欲はあり、睡眠/便通/足の冷え/吐き気などはとくに異状を感じたことはない。
望診
やや太り気味であり、そのわりに手足が細い。皮膚の色尺部の色は分かりませんでした。
聞診
話し方にはりがなく語尾がにごる感じを受けました。匂いとうは
分かりませんでした。
切診
切経
皮膚はざらつきがありつやや潤いがない。背中から腰にかけて緊張があり、特に右側の膈兪付近にしこりを触れる。手足の冷たい感じはなく、後頭部からこう頚部も特に熱感はない。ナソ部は左側の斜角筋ぶにナマゴムヨウ所見を認め、左右天柱から第2頚椎側にかけて硬く纐纈を触れる。
腹診
腹部は割りとふっくらした感じを受けるが、皮膚につやなくざらつきがあり押しても弾力性がないので虚腹と見た。
経絡腹診では右実月から腹哀にかけて肺の診所ざらつきかんげして虚。臍を中心とした中かんより陰交にいたる脾の診所力なく虚。
陰交より恥骨上際にかけて腎虚。
脉診
脉状診
沈やや遅にして虚。
比較脉診
左手しゃくちゅう沈めて腎虚。右手すんこう沈めて肺虚。右手かんじょう沈めて脾虚、浮かせて胃ややあり。右手みゃくちゅう浮かせて三焦虚。左手すんこう浮かせて小腸あり。他は平位と診ました。
病症の経絡的弁別
精神的な不安感ぼんやりした話し方後頭部から頭頂部にかけての頭痛は腎水経の変動。
皮膚のざらつき肩凝りなどは肺金経の変動。
やや太り気味疲れやすい食欲があり過ぎるは脾土経の変動としました。
証決定
異状の事柄を総合判断し腎虚脾虚の証を立てました。
予後の判定
病歴が非情に古く、長年薬を服用していること。皮膚の状態などで血に変動を起こしていることなどから推察すると、私の未熟な技術 ではかなり難しい症例になると思いますが、主訴の頭痛を軽減することを第1の目的に考え、治療を進めていくことにしました。
適応側の判定
左側のナソ所見が強く臍もやや右側に傾いているようでしたので、右としました。
治療および経過
脈状が沈やや遅脉であるので、やや深めに刺入し入念に補うことを心がけました。
まず、銀8分2番鍼を右復溜穴にたいし経に従って静に刺入し3ミリ程度刺入したところで留め呼吸がやや深めになったところを適度として抜鍼すると同時にて針穴を閉じる補法を行なった。見脉すると腎の脈が明瞭にふれるようになりました。ついで右尺宅、左陰陵泉にたいし同様の補法を行い、見脉すると脈状は遅脉が平に治まり沈脈も中位にまとまってきましたが、脈の硬さは残りました。
尚陽経をみますと三焦はまだはっきりせず胃と小腸にけんとおもわれるま虚生の邪を触れましたので、左右外関に補法、右豊隆、左姿勢より堅におおずる補中の瀉法を行い再度見脉すると、邪が取れ脈が柔らかくなりましたので、表治法に移りました。
表治法
ステンレス1寸2番鍼にて腹部の中間/上かん/巨闕の纐纈部にたいし、深瀉浅補で刺鍼。左ナソのナマゴムヨウ所見に対し静に刺入し充分補ってから抜き鍼する深補浅瀉にて刺鍼。腹外にして左天柱より第2頚椎側の筋張りに対し5ミリ程度刺鍼し置き鍼。背部は皮膚のざらつきが特にひどいので、左側の手の平でけいさつしながら補的散鍼。右膈兪に温灸を行なった。
留置鍼を取り、見脉すると脈の硬さが取れ、脈の崩れがないので、初回の治療を終了とした。週に2回程度の継続治療をしてもらうこととし帰した。
5月30日2回目
問診頭が常にモヤモヤした感じである。朝起きがけにずきずきした痛みが出やすい。
治療は前回に同じ。
6月三日3回目
問診かなり楽になってきた。
治療は前回に同じ。
6月六日4回目
問診 風邪を引いたようで喉の痛みがある。食欲は旺盛である。
腹診すると胃部に膨満感があり、押すと不快感があるようで、脈診でも脾の見所に「つくつく」という邪を触れましたので、腎虚脾実証で行い、右復溜/尺宅に補法。左陰陵泉より補中の瀉法で行なうとかんじょうぶの硬さがやや取れてきました。後はほぼ同じ治療を行ないました。
6月十日5回目
問診 頭のもやもやするかんじはまだあるが、鍼をするようになってから朝のずきずきする痛みはなくなってきた。治療は腎虚脾実証で行なった。
6月17日6回目
問診頭のモヤモヤする感じや痛みは段々感じる時間が短くなってきた。脈診するとかんじょうぶの脈も邪が取れたようで虚脉となり胃ぶを押しても不快感がないので、腎/脾相剋に戻し、左第2頚椎側の纐纈も非常に小さくなっているので、今までの置鍼を止め、その部とかく湯に温灸、本人の自覚症状はないが、足に冷たい感じが出てきたので、湧泉に温灸を加えることにする。
6月30日8回目
問診朝起きたときでも頭痛/頭重はなく家出内職を始める。
「鍼をしていて調子が良いのなら、少しずつ薬を飲まないように」減らすことを指導した。
7月18日11回目
問診暫く頭痛がなかったのに最近痛みがあちこち移動するように出てきた。
治療は腎脾相剋で行い、左右のしょうかい/れっけつに5,3の奇経灸(温灸で代用)を行なう。
3週間ほど薬を止めていたが、又これ以上ひどくなるので、又薬を飲み始めたとのことであった。その後2回の治療を経過し
8月14日
15回目
問診かなり楽になったので暫く様子を見たいとのことであった。治療は腎脾相剋で行なう。
考察
本人が楽になったというので、これ以上継続させることは難しいと断念する結果となったが、追試という意味においては、私自身もう少し継続して治療をしてみたかった症例である。反省する点は本証を腎虚としたのは良いと思うが、副証であるかんじょうぶの脾の見所は硬く触れるため、実ではないかと見誤ったのではないかと不安である。
初め腎脾治療をしているのだから補い過ぎて実することがあるのか、気を漏らして脈が硬くなり、実と見誤ったのか、自分では判断がつかないということです。
次に少し経絡治療に慣れて
きたせいもあり、脈診/腹診に頼り過ぎて問診が大雑把で情報が不足したため、証をたてる段階で、かなり苦慮したことを踏まえ、もっと綿密な問診を術者のほうで、問いただし証決定に結び付けていきたいと思う。
3番目は一挙に止めるとその反動が来るといけないから徐々に薬を離す様に私としては指導したつもりであったが、患者は素直にこちらの指示を信じすぎたようで、きっぱり止めたため、急激に具合が悪くなることもあったのでよくよく言葉には細心の注意を払わないといけないと思った。
ある程度軽減すると患者は治ったと錯覚するため、治療を止めてしまうが、これで鬱病が治ったわけでもなく、症状も出たり引っ込んだり交互に繰り返すと思われるので、その説得が非常に難しくそれが今後の課題だと思う。
脉に捕らわれすぎたり又必要のない問診を行い、 複雑な病症に惑わせられたり1穴補っただけで楽になったといわれたり守取穴しただけで響きがあったり、経絡治療の優秀性と難しさをいろいろと勉強させていただいた3年間でした。講習部で学んだことを日々の臨床に役立てられるよう努力していきたいと思いますので、今後ともご指導宜しくお願いします。
平成11年3月 本部定例会において新潟支部員
追記
この症例発表は本部講習部最後の卒業月である本部定例会において、行なったものです。
3年間東京へ通い続けその思いがいろいろとある中で、行なった症例発表でした。指導部の先生方のいる中で、自分が今行なってきた臨床を精一杯表現しようとしている発表であったと思われます。
内容については、今読み返しても安定している症例であったと事故評価しています。
開業3年目で東洋はりに入会してから5年目の臨床であることを考えれば、まずまずといったところでしょうか?自慢話しではなく私のようなものでも5年くらいやっていれば、これくらいの技術は習得できるということを皆さんに知っていただきたいと思います。皆さんなら、もっと速く到達出来る通過点ですので、鍼灸師の皆さんは、目指す治療手法が違っても、勉強5年。開業3年くらいになればこれくらいの臨床は充分行えるということを知っておいてください。
当然ながら、患者さんの症状を軽減させ、病気を治すということが最大の目標になりますが、我々はそればかりに捕らわれることなく、患者さんの生活環境をサポートできるような治療科でなければならないと思います。
時には、患者さんにとっても家族の人にとっても都合の悪いことを言ったりアドバイスすることも
必要ですし、必要であると思ったら通わせることも必要です。時には病院へ行ってもらうことも必要です。そのときに自分が出来ることを精一杯やるということがベストを尽くすということであり、結果が良いか悪かったかは臨床かとしてはあまり気にかけることではないと思いますので、皆さんも今自分がなにをすべきかなにが出来るのかを考えてください。
患者さんとこれから患者さんになってくれる皆さんへ
2010年7月14日
無断キャンセルは困りますよ
前略。今日は鍼灸師として、私は皆さんに一言申し上げたく書かせていただきます。
これは今に始まったことでもないし、私や泉心道鍼院ばかりの事ではありませんが、
患者さんの中で、予約をしていって連絡もなくそのまま来なくなるという人がいます。
いわゆる「すっぽかし」ということです。患者さんの考えやいろいろな思いがあって、そのようなことをするのでしょうが、それは私から言わせていただければ、「人としてのマナー違反」であると思います。
そのような人はおそらく、大きな病院で検査を受ける日であっても、自分が必要でないと思ったら無断キャンセルするのではないかと思いますが、
皆さんもよく考えてください。もし、待ち合わせをしていて相手が連絡もなく、来なかったらどう思いますか?
もし、ホテルやレストランを予約していて、都合が悪くなり、「まあいいか」などと無断でキャンセルしたらどうなりますか?
食材が皆無駄になり、ましてや団体などの宴会などでは、大きな損失が出ます。そのばあいのお店の対応は分かりませんが、キャンセル量を請求されるのは当然であり、下手をすれば損害賠償を請求されかねませんね。
病院や鍼灸員/整骨院/美容院/床屋さんなどは、前もっての材料費がかかっていないので、そこまで請求はしないとは思いますが、口答約束とはいえ、契約をしていることには変わりがないと思いますので、無断キャンセルは明らかに契約不履行ということになります。
患者さん、お客さんの側がそのお店や病院/その先生などを信頼して通っているということは、我々する側も患者さんを信頼して治療を行なっているということですので、その信頼を著しく傷つけるような行為(裏切り)は、慎まなければなりません。
90パーセント以上の人は、普通に来院するのに、一部のそのような人がいることで、患者さんにたいする我々側の信頼は失墜してしまいます。
皆一定のマナーとルールの中で、この世の中は成り立っているということを考えてみてください。
当然来るか来ないかを決めるのは患者さんの権利です。
しかし、一度来院した異状は、それから後のことは医師や鍼灸師の指示に従うのが、本当の患者さんのあるべき姿だと思います。
それが出来ない人は初めからその病院/治療院に行くべきではないと思います。
よく、「お客様は神様だ」と言いますが、治療をする側もされる側もどちらも人間です。どちらも信頼関係でなりたっています。お客様であるからといって商品を買ってやっているというような気持ちでは治療にはなりません。又、我々側も治してやるなどと思ってやっていてはいけません。
あくまでも治療側と患者側は対等であるということを私は常に感じています。
患者さんの立場からすれば、「自分が思ったような結果にならなかったので、行かない」ということになるのでしょうが、仮にそうであったとすれば、私は、予約をしないで帰れば良いのだと思います。もう行かなくて良いと思ったら、「暫く様子を見ます」とか、「暫く休みます」といえば、それでよいのです。医者や鍼灸師にそのようなことをいえないと遠慮してのこととは思いますが、それでも言うほうが無断で来なくなられるよりはずっと良いと思います。
泉心道鍼院では、現在来院時に次回の予約を取っていかれた場合は次回からほぼ半額で治療をしていますが、それは、皆さんの財布の中身を考えてのことだけではありません。半額にする理由はそれだけ回数もかかるし、通院感覚も1週間に3回、2回必要であると思われるので、トータルでみれば、かなりの回数通っていただくことになり、それでは、負担が大きくなり過ぎるということで、半額にしています。
半額にするから、予約にしなさいと言うことではないのです。必要がないと患者さん自身で思うのなら、電話してからきますといって帰ってもらっていっこうに構いません。
途中で治らないからと諦めて治療を止めるのも、もう少しやってみようかと思って続けるのも、全て皆さんの意思ですので、それを誤解してもらっては困ります。
ただし、治らないのは途中で止めた自分のせいであるということを、患者さん自身も知らなければなりませんね。
治療科の言うとおりにに通ったけれど結局治らなかったというのなら、それは我々の技術不足ということになりますが、指示を聞かないで途中で来なくなるのは自業自得です。
私は冷徹かも知れませんが、冷酷ではないつもりです。
世の中の環境がいかに変わろうといかに物が溢れている時代になろうと、人間が生きていくことは、一人では出来ません。皆が支えあい、皆が役割をもってこの社会を形成しているということを、もう一度考えていただきたく、鍼灸師として書かせていただきました。
それでは、又後日にお便りします。