解離性症群(Dissociative Disorders)について
「解離性症群(解離性障害)」は、本来なら一つにまとまっているはずの**意識、記憶、アイデンティティ(自分は何者かという感覚)**などが、一時的に切り離されて
バラバラになってしまう状態を指します。???
多くの場合、耐えがたいほどの強いストレスや心の傷(トラウマ)から自分を守る
ための、脳の防衛反応として起こると考えられています。
「1. 主な症状のバリエーション」について一緒に見ていきましょう。
解離性症群(解離性障害)は、症状の現れ方によっていくつかのタイプに分類されます。代表的なものを表にまとめました。
| 疾患名 | 主な特徴 |
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| **解離性健忘** ?????? | ストレスフルな出来事や、特定の時期の記憶をすっぽりと
忘れてしまう状態です。 |
| **離人感・現実感消失症** ?? | 自分が自分ではない感覚(離人感)や、周囲が
作り物のように感じる(現実感消失)が続きます。 |
| **解離性同一症(DID)** ?? | 以前は「多重人格」と呼ばれていたもので、自分の
中に別の人格が現れ、その間の記憶がないことがあります。 |
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私たち臨床課にとっても、一般の皆様にとっても、通常であれば、このような病気は、
あまり遭遇することのない症状であったり、知り合いの人にも、まったく見受けられ
ないというのが、ほとんどではないでしょうか?
しかし、心はとても敏感で、いつ私たち自身も、そのような状況に陥り、発症して
しまうかもしれませんね!家族や周りの人が、発症し、いやおうなしにかかわりを
持たざるを得なくなるかもしれません。
特に、離人感・現実感消失は、少し感じることはないですか?
### なぜこのような症状が起きるのか?
これらはすべて、心が耐えきれないほどの苦痛に直面したとき、その苦痛を自分から「
切り離す(解離させる)」ことで、**心全体の崩壊を防ごうとする防衛本能**から
生じると考えられています。
「2. 心が『解離』するメカニズム」について解離は、自分ではどうしようもないほどの大きな衝撃(トラウマや過度なストレス)を受けた際、心が壊れてしまわないように作動する**「緊急避難的な防衛システム」**だと言われています。
具体的にどのような仕組みで心が自分を切り離すのか、3つの視点から整理して
みましょう。
| メカニズムの視点 | 内容の説明 |
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| **心のブレーカー** ? | 電気回路に負荷がかかりすぎるとブレーカーが落ちるように、感情や感覚を一時的に「オフ」にしてショックを和らげます。 |
| **意識の分断(コンパートメント化)** ??? | つらい記憶や感情を、普段使う意識の「引き出し」から切り離して、別の場所に閉じ込めておくようなイメージです。 |
| **脳の働き(扁桃体と前頭前野)** ?? | 恐怖を感じる「扁桃体」の活動を、思考を司る「前頭前野」が過剰に抑え込むことで、感情が麻痺したような状態になります。 |
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### なぜ「切り離す」必要があるのか?
例えば、自分では逃げ出すことができない圧倒的な恐怖に直面したとき、意識を遠ざける(=解離する)ことで、**「今ここで起きていることは自分とは無関係だ」**と脳が錯覚させ、苦痛を感じにくくさせます。これが「心を守る」ための最大のメリットです。
しかし、このシステムが自動的に作動しすぎてしまうと、日常生活の中で「自分が自分である感覚」が薄れたり、記憶が途切れたりして、困りごとにつながることがあります。
「心を守るための」防衛起点ということであれば、皆さんも、毎日のように、無意識に、やっているのではないでしょうか?意識するか、無意識化の違いであったり、何度も
何度も繰り返すか、時々かの、違いはあるかもしれませんが、「自分は、絶対そんな
ことはない??」というような、人はいないのではないでしょうか。
3. 回復に向けたプロセス」について
解離性症群からの回復は、切り離されてしまった「自分の一部」を、時間をかけて
少しずつ統合したり、安心して共存できるようにしたりするプロセスです。
主な回復へのステップは、大きく分けて以下の3つに整理できます。
| ステップ | 内容と目的 |
| --- | --- |
| **安全と安定の確保** ?? | 日常生活のストレスを減らし、まずは心身の安全を
感じられる環境を整えます。 |
| **グラウンディング** ? | 「今、ここ」の感覚を取り戻す練習です。五感を使って、意識が遠のくのを防ぎます。 |
| **専門家との共同作業** ?? | カウンセリングなどを通じて、解離の原因となった
過去の傷つきを安全に扱っていきます。 |
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### 「グラウンディング」とは?
解離が起きそうなとき(意識がぼんやりしたり、現実感がなくなったりするとき)、
意識を現実につなぎ止めるためのテクニックです。
* **視覚**:部屋の中にある「青いもの」を5つ探してみる。
* **触覚**:冷たい水で手を洗ったり、椅子の感触を確かめたりする。
* **嗅覚**:好きな香りのアロマを嗅ぐ。
このように、**「今の身体感覚」**に集中することで、脳の防衛スイッチ(解離)が
過剰に入るのを和らげることができます。
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先ほども書きましたが、「鍼灸療法施術者にとっては、臨床上あまり遭遇する、病状ではないかもしれませんが、自分自身を含め、だれもが、いつこのような病状を発症しても、おかしくはないということは、言えると思います。」、そのように私たち自身も、
「他人ごとではない」という意識を持っていたほうが、このようなケースに遭遇した時、
落ち着いて対処できる備えとなればと思って、一緒に考えてきました。
上に掲げたものは、解離性障害の入口にもならない知識ではありますが、関心を
持っていただければ、皆さんも、この病気について、もっと詳しく調べてみてください。
東洋鍼医学的に考察しますと、障害のタイプによって、東洋医学においても、大別は、異なり、整理するのは、少し困難だと思います。
しかし、基本となるものとして、「脳」を、経絡的に考察すると、脳髄の深いところは、肝経、全般的には、督脈、膀胱経、前頭葉は、胃経、側頭葉は、胆経、三焦経
など、おおざっぱな流中として、考察できるのではないでしょうか?
東洋医学の根幹である、「陰陽」の不調和で、病気はひきおこると考えますが、
解離性症群は、はなはだしくこの陰と陽のアンバランスが引き起こされて、拮抗が保たれなくなっている状態と、考えられます。
「脳の働き(扁桃体と前頭前野)** ?? | 恐怖を感じる「扁桃体」の活動を、思考を司る「前頭前野」が過剰に抑え込むことで、感情が麻痺したような状態になります。」を、
この文章を単純に5臓の色体表に当てはめれば、
恐怖を感じる「扁桃体」の活動(腎)が思考を司る「前頭前野」(脾)が過剰に
抑え込む。(脾虚腎実証)という、イメージは、成り立たないでしょうか?!
「神経症と心身症の違い」から、5回に分けて、考えてきましたが、あくまでも、
専門的なものではなく、鍼灸師の立場から、特に鍼灸療法として、どのようにとらえて
いけばよいかということを、一般の方には、私たちがどのように、このような病気や
症状に対して、考えて、施術を行っているかを、知っていただければと、思って書いて
きたことを、付記しておきます。