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東洋はりの診察方法4-脉診のお話その5

病症と脉状

皆さん、こんにちは。先回はわれわれが本来持っている素因脉についてお話しさせていただきました。今回は病気になったときにどのような脉状を表すかということをお話しさせていただきます。
さあ、29枚目の扉を開けてみてください。

昔は、脉状を見ることによって、病症診断や予後の判定などをしていましたが、病床はその患者さんの置かれている環境の条件によって大きく影響を受け、昔と今とでは全くその表す病態象変わってきましたので、そのまま参考にすることは出来なくなっています。

漢方医学の「医方大成論」には、「風が浮洪と、寒・遅緊。暑くて沈伏、湿・沈緩」と書かれています。

これは、風・暑さ・寒さ・湿気などの外邪を受けた時の脉状を説明した文章です。

  • 風邪に侵された場合は、発熱・頭痛・汗が出て、咽喉痛み、咳して、時に目まいを起こし、脉状は浮洪を現すもので、そうなっていない場合はよくないということになります。
  • 寒邪に侵されたときは、寒熱往来して咳が出て悪寒して汗は出ない、脉状は遅緊を現し、そうでない場合はよくないということになります。
  • 暑邪に侵されたときは、息切れがして全身だるく、咽喉渇き食が進まない、横になることを好み、時に下痢をする、その脉状は、沈幅を現し、そうなっていない場合は、よくないということになります。
  • 湿邪に侵される場合は、体重くふくれ痛み、緊痛み、筋こわばり疲れやすく動機して、胸苦しい、腹張って大小便通じなく、その脉状は沈緩を現し、そうなっていない場合は、よくないということになります。

しかし、何度も書きますが、今の時代に生きている人は、ほとんどの人が医療機関で受診したり、薬を飲んでいたり、予後についてもある程度、病院で判定を受けていますので、この脉状を頼りに、われわれ鍼灸師が予後判定をしたり、病症の診断にはそのまま役立てることは出来ない状況です。

古文献による脉状論

脉状に関しての文献は非常にたくさんあって、学者や治療科の解釈によってもいろいろです。ある程度まとまったものに、「七表の脉、八裏の脉、九道の脉(24脉状論)」というものがあります。

  • 七表の脉「浮(ふ)・芤(こう)・滑(かつ)・実(じつ)・弦(げん)・緊(きん)・洪(こう)」とがあり、これらは表陽部に現れます。
  • 八裏の脉「微(び)・沈(ちん)・緩(かん)・墻(しょく)・遅(ち)・伏(ふく)・軟(なん)・弱(じゃく)」とがあり、これらは、陰裏にあり慢性の虚体に現れます。
  • 9動の脉「長(ちょう)・短(たん)・虚(きょ)・促(そく)・結(けつ)・代(だい)・牢(ろう)・動(どう)・細(さい)」とがあり、これらは痼疾(こくしつ)、難症に現れる変動の脉状とされています。

以上が脉状論の記載ということになりますが、それを活用して治療に結びつけるのは、とても難しいということになります。

今回はこの辺でお話を終わりとさせていただきます。