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パニック障害の治療

はり治療でパニック障害を改善

パニック障害の症例をご紹介いたします。文字背景にピンク色がある用語は、本文末尾に簡単な用語説明を記載いたしておりますので必要に応じてご覧ください。


1例:患者33歳 女性 無職

来院時の状態:
来院されたときの状態は、不安感と動悸がもっとも強く、10年くらい前からひどくなったとのこと。
その他の症状としては、突然不安に襲われ冷や汗をかく。手足腹などに汗をかきやすい。眠れないなどの症状がありました。心療内科を受診中で2ヶ月くらい前から漢方薬を服用されていました。
腹は、力が弱くて下腹部が冷たい。脈は、沈んでいて遅く弱い。
治療方針(証)
治療方針としては、肝・脾相剋調整という証を立て、右曲泉・陰谷・左陰陵泉に補方。胃に関係する経絡と、好転の元気(全身の緊張が強い)と考え、三焦経を調整しました。後は頸を中心にはりを行いました。

2回目の治療で夜になると不安感が強くなりそれを抑えようとして血液が逆流する感じがあるといわれました。

3回目より内関・皇孫というつぼにきけい灸を始めました。嫌な汗や突然襲ってくる感覚は6回目くらいからなくなり、仕事も始めました。

証は途中から腎虚証に換えて行い、15回で治療を終了としました。


2例:患者42歳 女性 会社員

来院時の状態:
車に乗るとめまいがして動けなくなる。昨年の春にめまい。8月30日の朝からめまいで車を運転出来なくなる。人が立っていると不安。睡眠薬は飲まない。
症状としては、頚から背中が凝り冷たい。手足の冷え、目覚めやすい、喉口の渇き、胸苦しい、頻尿、耳鳴、不安感、めまいなどがありました。
腹部は硬く下腹部が冷たい。脈は沈んでいて遅く、弱い。
治療方針(証):
治療方針としては、腎・脾調整という証を立て、右復溜・尺宅・左陰陵泉に補法を行い、好転の元気(全身の緊張を高める目的)で三焦経を調整しました。
頸を中心にはりの後、肩と左肝兪に温灸、左照海・れっけつにきけい灸を行いました。2回目の治療のときに、治療後、頸や頭が重くなったと言われましたので、証を脾虚証に換えて、3回続け、右内関・左右足三里(気持ちを落ち着けさせることと、好転の元気を高める目的)に温灸をしました。

初めは通院するときも会社の通勤でも父親から送ってもらっていましたが、5回目くらいからは自分で運転できるようになり、しばらく安定していました。

治療2ヶ月を経過したときにまた運転中に不安に襲われ三日ほど会社を休むことがありました。そのときは2回続けて腎虚証に証を換えて、ぎんりゅうというシールを貼って帰宅してもらいました。それ以来は落ち着いていて、めまいも全くなくなっています。

以上、二つの症例をご紹介いたしましたが、一人目の方の治療を進めていく中で、「私のように眼が見えなくなってしまったのは、障害であるけれど、病気と障害との違いは、病気は、いつかは治ると言うことです。

治療をして残ってしまって働きが思うようでないのが、障害なんですよ。それが障害と病気との最も違うところですから、がんばって治しましょうね。」というようなことを言ったのを覚えています。

パニック障害はうつ病や統合失調症とは違い、不安になることがもっとも恐ろしく、それが体の偏重として現れるものと思いますので、安心を与えることと自信を持たせることが大切だと思います。発作が起きているときは別として、普段は勇気づけたり、目標を持たせるような接し方が大切ではないでしょうか?

ちなみに、うつ病などはやる気が起きないとか、がんばろうとすることで逆に落ち込んでいきますので、周りにいられる方は、勇気付けたりはっぱをかけるような言動にはご注意ください。


用語説明:

証(あかし)
東洋鍼灸治療では、治療を進めるにあたり、証(あかし)を決定します。証とは、体のどのつぼに鍼やお灸をするのかを決定する、治療方針のことです。
きけい治療(灸)
経絡治療の中の一つの治療方法で手と足からそれぞれ一つずつ、つぼを選んで組み合わせ、鍼の材質や灸の数に差をつけることによって、プラスとマイナスの働きを利用したもので、水の流れにたとえると、充満した水を溢れさせないために、排水路に流してあげる目的で行なわれる治療法です。

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