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新潟市の泉心道鍼院よりメッセージ

経絡治療要綱解説

2010年10月7日

経絡治療要綱4診法についての解説

近年本会でも講習生を指導する実技指導のテーマとして、「望/聞/問/切」の4診法が強調され、主役である脉診により最終決定して証に結びつける努力がなされてきた。しかしながらこの要綱が書かれた時点では、果たしてそこまでとりわけ「望/聞/問」を大切にしていたかははなはだ疑問に思う。

特に、福島先生/小里先生のご存命那ころに入会し、基本を習ったころのしょ先輩の時代は、「脈診流経絡治療」というごとく、脈診に頼る傾向が強いようだ。現在においても古い会員の多い地方支部になればなるほど「脈診」に重きをおき、「望/聞/問」の3診は完全に脇役になっている傾向はあまり変わっていないようだ。

望診 確かに視覚障害者にとって特に、

「望診」は不可能であり、助手を置いているような大先生であって も他人の言葉から得られる情報に過ぎないので、

証決定に結びつける手がかりとしての有意義性は乏しく困難を極める。

聞診ということになると、5音/5声/5香それぞれあるが、視覚障害者が「音に敏感である」というのは、一般的に誤解に近い理解の欠如とも言える認識である。

確かに健常者と違い、聴覚に頼らないといけない分だけ耳ざとくはなるかもしれないが、

その機能を活用して角音だとか宮音だとか、商音角音の混合音だとか聞診が出来る人はそうは多くないだろう?

しかし、晴眼者の治療科であれば、せっかく貴重な情報である望診を使わない手はない。

特に、眼の色、唇の色、皮膚のつや尺部の色とつや、爪の色と線の状態などを観察するとかなりの情報を入手することが出来ると思う。そして、本会ではほとんど触れてはいないが、舌診を勉強し活用することはかなり大きなこまとなると私は思う。

是非お勧めし研究発表を期待します。

それから私は尺部の色は見えないから良くその部を触診することにしている。皮膚のつやと皮膚の温寒。湿り状態。外側との比較。左右差での比較をして見る。つやがあり膚のきめが細かな人は敏感で気の流れが速いと考え浅く鍼を刺し手早く行なうほうが良い。逆につやがなく冷たいような人は脈も沈んでいるのでしっかりと鍼を入れ、ゆっくり鍼の操作を行なう。爪もよく触診し、滑らかかしわがあるか、しわは縦しわか横しわかを観察してみる。神経質な人は爪にしわがあるようで、割れて内臓になんらかの原因があるかもしれないと注意をしておく。

時々ではあるが、聴診器を用いて、心音だけではなく呼吸音グル音なども参考にするばあいがある。

問診は本文「患者の欲する「酸/苦/甘/辛/鹹」を問うてその病のあるところや経絡の変動を明らかにする。そのほか、年齢/境遇/病歴現象

(食欲/睡眠/便通/月娠/疼痛/体温)とうに渡り、これらを病因/病症/経絡病およびそのるちゅう/5臓の色対表を活用して経絡的問診を行なうべきである」となっているが、術者も患者も現代医学にどっぷり使っているので、どうしても現代医学の解釈で判断し、主訴や愁訴に振り回される結果となりやすい。

切診には、脈診、腹診、切経がある。

腹診は本文「患者に充分な説得を行なうためには、現代医学の知識も取り入れ実際に複合した腹診を行なうように勤めなければならない。この部に現れる病変には生命の予後を左右する病床が多いので、その鑑別に注意が必要である。中でも急性症としての子宮外妊娠や重篤な胆石、胃腸潰瘍、化膿性盲腸炎とうによる潜行性腹膜炎

膵臓壊疽、難症の膿胸、肺気腫、狭心症、心筋梗とうについては随伴する病症ともにらみ合わせて判断を誤らないように診察する必要がある

」と書かれている。

本会で開発した経絡腹診において、脉症/腹症一貫性により鍼治療をするならば、未然に誤治を防ぐことなり、大変優秀な診察法でであることは間違えない。

しかし、どのような患者が何時来院するか分からない我々の治療室においては臓器診をもっと勉強する必要がないかと思う。

本文「腫隆を触れたときそれが筋腫なのか癌腫なのか、両性化悪性によって患者に対するアドバイスが代わってくるので、判断を出来る触診力が必要である。大まかに区分としては、大角膜より上の肋骨に覆われた部を胸部といい、状焦げとしょうし栄衛の循環を司る。その下臍までを大腹とし中焦げといい、栄衛の精製を司る。臍下を小腹とし下焦げといい、排泄を司る。脇の下

より股関節までを大きく側腹という。まず、患者の胸骨上で呼吸や動悸をうかがい、鎖骨下で肺の気をうかがい、大腹で肺の気をうかがい、小腹において下焦げや腎肝の動悸をうかがう。特に側腹部において肝の気をうかがい、左乳下部においてはきょりの動(心先拍動)につき、心の気をうかがう。

平人無病の腹はさながらふかしたての饅頭を探るがごとく。腹部全体が実してさながら鼓の皮を押すがごときものを実証といい、その虚満のものを張満としょうし、脾胃の変動によるものである。又、大腹小腹ともにかんげしてさながら古き綿に触れるがごときものを虚腹軟弱といい、脾腎の証である。この中で蛇を入れたごとく亀の甲を押すがごとく臍の上下に筆の軸にでも触れるごときものは全て不治の難症である。

小腹より動悸せわしく大腹に攻め上り息遣い荒きものわ陰虚火動。側腹部を押して著しくかんげするは肝気の虚にしてにわかに中風を起こすといわれる。

臍下炭田の部に静かに手を当て、緩やかにして正しく拍動し和緩をおびるものを腎肝の動悸の良好とする。きょりの動はあるがごとくなきがごとく和緩をおびたものを良好とし

、軽く按じて騒がしく触れるものを気虚。押して硬く根のあるものを血虚である。

特にその動悸が激しく衣服の上から触れられるものは心気虚損の悪こうにしてにわかに心肺の病を起こす恐れがあるから、気をつける。

経絡腹診における実証の触覚所見について

実証には盛気実と邪気実があり、盛気実はその部の皮膚が滑らかではりがありやや盛り上がっている。邪実の腹症はその表面は虚に見えるが、軽く按圧すると深部に纐纈を触れ、痛みを訴える。これを按じてろうという。按じてろうの腹症のうち、痛みを感ぜず生気がなく不快を感じるものがあるが、これは邪実ではなくな難症固執による虚の腹症(しゃく)である。脾の診所や腎の診所によく現れる。」と書かれている。

切経

本文「経絡治療においては主訴や病状に基づいてその局所を触診することはもちろんであるが、12経のるちゅうに従い説経を行なって5行穴5筆要穴その他の特殊穴を目標に

切経を進めることになる。

その部の触感/体温/圧痛/纐纈/かんげ/知覚過敏とうに着目する。

経絡の触診にあたって、虚経中にも実痛あり実経中にも虚痛があるなど、実際の臨床はなかなか複雑化しているので、5行穴には経と穴とが相剋しているばあいもあり、肺虚証で肝経心経が実している場合(急性扁桃炎とう)には、

相剋関係にある承漿穴や魚際穴は実していることが多い。

しかし、あまり触覚所見に捕われすぎて証決定に繋がらないものまでも撫でまわしたり施術しているとドーゼを過ごす恐れがあるので、必要最小限に留めておく。気の動きを見る触診は重要で、皮膚面に触れるか触れないていどにごく軽く当てた指腹を静に滑らせ時に揺り動かすなどして微妙な触サツをしなければならない。生きて働いている穴を取るには、さながら点字を触読するように触って軽妙に触刷しなければならない。」と書かれている。

以上、取り留めのない話しでしたが、脈診はいうにおよばず、腹診、切経とう、触察に頼らなければならない治療法が経絡治療であり、優れた臨床かはいかに微妙な変動をその指で捕らえることが出来るかいなかにかかっていると結論付けられます。

理想をいえば、4診法を合わせて100ぱーせんととしたならば、脈診50パーセント、切診25パーセント、問診15パーセントその他10パーセントというような比重になると良い治療科という具合になるのではないかと考えるしだいであります。

2004年新潟支部定例会において 副支部長 今泉 聡

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