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新潟市の泉心道鍼院よりメッセージ

暖房を着けました

2010年9月25日

治療室は暖房を入れました。

前略。ほんの2週間くらい前まで30度を越えていてもう暑さはごめんだと思っていたのに、ここ最近は冷え込んで、今日は治療室に暖房を入れました。

三日前からは、私は冬の布団をかけて寝ていますし、あまりにも急激な気温の変化で体がどうにかなりそうです。

暑さ寒さも彼岸までとよくいったもので、もう、秋ですね。又、暑くなる日があるかもしれませんが、もう確実に冬に向かっていくような気がします。

いつもなら、明日は新潟支部の定例会であるのですが、先週講習会を行なったので、明日はゆっくりしていようと思います。

ようやく風邪も治りかけてきましたので、休めるのは助かります。

それでは、又後日にお便りします。

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2004年2月綱領解説

2010年9月24日

綱領解説

2004/02/22 今泉聡

参考資料

衛生業務報告 あはき師の数(平成14年)

按摩マッサージ指圧師 97313人

鍼師 73967人

灸師 72307人

業務種別施術所数

あはきを行なう施術所47パーセント(32722箇所)

按摩マッサージ指圧を行なう施術所29パーセント(20772箇所)

鍼灸を行なう施術所20パーセント(14008箇所)

その他4パーセント(2948箇所)

「我々は正しい経絡治療の学理と術技を習得することによって」とあります。「正しい」とはどういうことでしょうか?「正しくない」経絡治療は存在するのでしょうか?

日本には多数の学術団体が存在し、とかく少数派と言われる経絡治療を基礎とする団体も多数あります。特に古典に基づく治療法をしていて脈を捕る治療法もあちこちに見られるようですが、脈を捕っているばかりで実際に鍼をするときには、経絡経穴を調整する治療ではなく、あくまでも刺激点としての

経穴の運用や虚実をわきまえない経絡の調整をして、それを経絡治療だと声高にいっている輩が多いようです。

本会では脈診はもちろんのこと、押し手の手さばきによって補法瀉法のの使い分けをしていますし、経絡治療の真髄として経穴の運用によって補瀉を行なっています。まだまだ研究し臨床運用しなければならない点が多ものですが、

「正しい」経絡治療に近づきつつあり、けっして穴を使えば経絡治療であるなどと誤解してはいけません。

次に「鍼灸人としての人格と実力を涵養し」とあります。

これは大変難しい。鍼灸人としてを医療人としてのというのと置き換えても良いと思う。

次の社会的地位ということと関係していくことだが、なんといっても世間では鍼灸師などというのは、医療人などという認識がほとんどないようにも思えるし、医療としての一分野であるという認識ですら思われていないように思う。

医療というのは一般的には保険医療器官を指すものであり、病院にせよ歯医者にせよ保険が利くものを医療と捕らえる向きがあるのではないかと感じます。

そのように考えるとやはり鍼灸も保険を取り扱うことがますます重要で、いろいろな考え方があることは私も承知していますが、我々鍼灸科も保険を取り扱うように積極的に活動をしていかなければなりませんし、

「保険なんか面倒だし鍼灸を良いと分かる人は保険なんか利かなくても

かかりに来るからそれでいいんだ」という従来からの鍼灸師の、あえて言えばプライドをどう捨てさせるかが、今後の過大だと思います。

一人でも多くの患者の病苦を取り除きたいというのであれば、

一歩譲って医療としての鍼灸という観点に立ち、

保険取り扱いをする鍼灸院になられんことを考えてみてはいかがでしょうか。

考え方や生き方の問題はそうは言ってもそうそう、変わるものではありませんし、

換えさせるなどとは「大きなお世話だ」と言われそうですが、それならばせめて

鍼灸も同委書があれば

6疾患にたいしては健保が使えることを説明し、しかるべき治療院に紹介をするなど、患者の要望にそった対応が出来るよう、心がけていただきたいと思います。

最後に「鍼灸科の社会的地位を確立せんことをきす」とありますが、

病因で行なわれていないのが鍼灸の実状で、実際にはマッサージをする、リハビリーの補助をするということで、雇用されているというのが実状です。

又、近年介護保険制度導入により、「ケアマネージャー」や「機能訓練指導員」としての分野に道が開かれ、そちらの方面に進鍼灸師も多くなってきました。

このことは医療の一分野を担う鍼灸師の社会的地位の向上につながっていると考える業界の向きもありますが、私はそうは思いません。

鍼灸師はあくまでも鍼灸をすることによって、患者を治す、救う。おくがましいけれど、

それを生業にする職業です。

その考えをしっかり持っていないと道を外れることになりますよ。

もう一つ付け加えれば、鍼灸イコール按摩マッサージ指圧イコール盲人。という構図が残念ながら一般の方々のみならず、我々鍼灸師の中にも根強くあります。

この認識が変わってこない限り、鍼灸科の社会的地位などは確立されないと私は考えます。

業界や学校でも必ずあはき師という言葉で

一括りにされていますし、

とかく晴盲の比較としょうして

そのデータがよく出てきますが、普通で考えれば、晴眼者で当たり前。盲人が少数で当たり前なんです。視覚障害者の職域を守る運動は大切ですが、それだけに縛られていてはいけない。

実力のないものは晴盲問わず脱落することは必定です。

そのためにも

鍼灸師と

して経絡治療鍼専門化としての技術レベルを高めていくということは今更ながらいうまでもありません。先ほど説明した20パーセント5軒に1軒

の鍼灸院が、25パーセント、30パーセントとなっていくことを期待します。(副支部長)

2004年2月新潟支部定例会において

追記

これは東洋はり医学会の第2番目の綱領を解説したときの発表です。この時点では本院でも少ないながら保険取り扱いを行なっていました。しかし、保険対象疾患が神経痛/腰痛/リウマチ/頚腕症候群/50肩/ムチウチによる後遺症と限られ、医師の同委書に基づいて行なわれるという制限があり、又同一疾患で鍼灸と医療併用が認められないなど不備が多くあるため、2008年からは本院では保険は取り扱っておりません。保険を取り扱うよりも自由診療で料金を半額にしてどの疾患であっても症状に対しても安くすることでかかりやすくなり、6疾患に制限されることなく、鍼灸を皆さんからかかっていただいたほうが、私にとっても患者さんにとってもより有意義であると思って今は行なっています。

しかし、このころの思いには変わりなく、医療器官である鍼灸院は、保険を使える様になってこそ医療として一半世間から認めていただけるのではないでしょうか。

これから開業される鍼灸師のみなさんには、出きるだけ保険取り扱いをしていただきたいと思いますし、一部とはいえ、健康保険で鍼灸がかかれることを患者さんにも教えてあげてください。

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年齢を感じます

2010年9月22日

急に寒くなりすぎて体調が。

前略。最近ご無沙汰をしていました。この連休は東洋はり医学会新潟支部で、特別講習会を行なっていたため、二日間研修付けになっていました。

その疲れもあってか、昨日あたりから喉が痛くなり、今日は鼻水と咳くしゃみが出ます。

ついこの間まで30度を越える日が毎日のようであったのに、朝晩はめっきり冷え込んでしまいました。夜はタオルケットだけで寝ていると寒いくらいですね。

ふと、思い出したのですが、先ほど書いた講習会は時々おこなっているものですが、2000年と2006年とそして今回と新潟のグランドホテルに宿泊をしていずれも行ないました。今泉の年齢で言うと、29歳のとき、35歳のとき、39歳と年を重ねてしまいましたが、なにを思い出したかというと、いずれも朝食で洋食を食べたのですが、記憶では29歳のころはなんだか物足りなさを感じてもっとパンがあればよいなあと思っていたように覚えています。

それから35歳のときはまあそれなりに

満足して、でもまだ食べたいというような欲求があったように覚えています。

そして、今回は同じような洋食のメニューであったのに、1枚トーストを食べるのがやっとで、おかずだけでもじゅうぶんというか、ジュースが余計くらいに思えました。

そんなことを思い出して、少しずつ食欲が落ちていて、これも年齢なのかと思ったしだいであります。

それでは、また後日にお便りします。

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刺鍼時における押し手/刺し手/足の位置について

2010年9月17日

治験発表刺鍼時における押し手/刺手/足の位置について 東洋はり医学会では、近年このようなテーマでシンポジュームが時々行なわれ、そのつど押し手の重要性を認識させられ次からの臨床に生かせるように意識はして見ますが、日がたつにつれまた型崩れを起こし、漫然とに患者に刺鍼しているものと思えます。特に私は普段からの姿勢も悪く股関節膝関節が硬く腰椎仙椎が後湾し柔軟性が乏しいのですが、「姿勢を正して」という強い意識を持たないと、自然体では体をねじったような不自然な体制になっているのが常の状態です。 また、たくみ先生がよく言われるように「臍下炭田に気を置いて」とか、「かかとに体重がかかっているためそり加減になるから、つま先側に重心がかかるように」とのことを常日頃意識するようにしています。 しかし、良い姿勢を心がけようとすると、臍より上に力が入ったり、足を左右に大きく開き腰を落として刺鍼していると、長時間(ほんの30秒程度だが)もう骨盤部の筋肉や大腿内転筋などがつるようになり、体が震えてしまいます。今更皆さんに言うまでもありませんが、体のブレや上半身の力みは押し手を不安定2し、下圧がかかり脈が硬く数になる。左手ばかりに気を取られて無理に押し手を軽く浮かせれば、気が漏れて脈が広がりぼやけてしまいます。そのような経験を毎日繰り返しているわけですが、「良い刺鍼は良い姿勢で」ということになりますが、本会では押し手の手さばきにはかなり煩く指導をしていますが、術者の姿勢や負担のかからない刺鍼法についてなどは、その研究は未だなされず、ここの治療科の独時流となっているようです。そこで、先ほど「良い刺鍼は良い姿勢で」と書きましたが、「良い姿勢」とはどのようなものでしょうか?第3者が正面ないしは背面から見たばあいの術者の頚から背中腰までが真っ直ぐになっていれば良い姿勢だと思いますか。 その辺を考えながら、今日は刺鍼時の姿勢について、皆さんと一緒に勉強させていただきたいと思います。(よく頭の中で患者と自分との映像を思いながら聴いてね) 押し手の位置について 押し手の位置を決めるということは、簡単そうで難しいものです。何故ならば、常に同じものに、同じ場所に押し手を作り鍼をするのであれば、問題はありませんが、患者の体型(この場合身、長よりも横幅や厚みが関係します)。ベッドが固定性か、電動か。 治療室の広さとベッドの位地。 (壁に片側がくっついている治療室もあるかもね) そして、治療科の体型(特に、このばあいには横幅よりも身長/足の長さ/リーチの長さ)。 などなど。種々な条件で良い押し手という位置は変わってきます。結局、各個人個人で工夫をし、自分にとって良い押し手を研究開発していくしかありませんが、そういってしまうと、今日の話は進みませんので、一応条件を決めます。 ベッドの位地は両サイド上下とも術者が回りこめる。電動ベッドで高さ調節が出来る。患者はベッドからはばけるほどの人ではなく、女性で解剖学的基本姿位で仰臥しているものとします。 私の考える良い押し手の位置は、術者の臍よりやや下側に左手がくるようにするのが望ましい。そのためには、ベッドの高さを調節しますが、私の足の長さで言うと、最高まで上げたとき、自分の股間あたりにベッドの上ヘリがきますので、患者さんの厚みを考慮しても、その状態を基本としています。この場合足を肩幅程度開き、刺鍼するときは、腹部/大腿部前面の刺鍼では、ほぼ基本的な押し手の位置が作れます。しかし、本治法はあくまでも穴に取穴すれば良いというばかりではなく、本会では迎随により補瀉を区別しますので、そこで問題が生じます。 例 右適応側肺虚が主証のばあい 右太淵を手穴します。この場合、右サイドに立ち、正面に向いた状態では迎随にはりを倒すことは出来ません。 (腎虚で尺宅を取穴するばあいも同様)臍下圧し手にするためには、経に従って取穴したら、左足を前に出し、膝を6、70度は屈曲させ右足はやや後方に引き、押し手の位置位置が決まります。しかし、45度にはりを倒す場合には、上半身をやや倒さないと刺し手が届かず鍼が直刺に近くなりますので 、脈動の変化は思うように行かないばあいがあります。 また、ベッドに腰掛けるような形で右腿の上に患者の右手を乗せ取穴します。このやり方では、押し手も安定し刺し手も45度以下に倒しても楽に操作できますが、治療科によっては患者に尻を向けるのは、マナー的によくないと思われる人もいると思います。それに腕を抱え込む形手は、押し手の安定は得られますが、ついつい加圧がかかってしまい脈動は平になりますが、硬く気が漏れる場合があります。 例 右側の胆経/胃経/膀胱経を補中の瀉法で処理する場合は、光明/豊隆を取穴します。 臍下に押し手を作るためには、両足を左右に開き腰を落とします。もしくは、肩幅程度に開き、膝を8,90度くらいになると思いますが、屈曲をさせます。 足腰に自信のある人は、膝関節屈曲方をされるほうが迎随45度を保ちながら、押し手の安定を保つことも加納です。 左右に足を開く場合は、同じ角度に開き重心も均等になるばあいは問題はありませんが、初めにも書いたようにかかとよりに体重がかかったりどちらかの足に体重が乗りがちになりやすいため、意識してやられたほうが良いでしょう。 私は下腹部がベッドのヘリに当たるようにしています。 足がなんぎくなったばあいには左膝をやや 屈曲させて体重をかけたほうが押し手に及ぼす影響は少ないようです。 右足に重心があると左手拇指人指側に加圧がかかってしまい、良い脈にはならないばあいがあります。 次に右金門に刺鍼するばあいは、ベッドの右角に立ち、右足は前方左足は横に開くと押し手を、良い位置に構えることが出来ると思います。 例 左足太白/陰谷に刺鍼するばあいは、迎随45度を目標にするならば、これも左側にたっていては不完全と思われますので、右側に立ち、同様な方法で施術します。 しかし、患者さんから膝関節を曲げてもらったり股関節を外転/外旋するなどの、協力も必要で、関節の硬い人や腰痛/神経痛がそれで誘発される人には配慮しなければなりません。 特に太白の刺鍼は頻度も高く一見容易に見えますが、小指丘/中指/薬指/小指でピッタリ包み込むような形にするのは、難しく、その押し手の置き方一つで脈に及ぼす影響はかなり違うと思います。 刺鍼中意識して押し手を安定させようとしても、実際には押し手がゆれ脈が浮いたり沈んだりしているようです。 例 うつ伏せになれなくて右横外で表治法ほどこすばあい、 これは、直刺であれば押し手は反対になりますので問題はありませんが、が、腰部/仙骨部の刺鍼て下方/下内方/下 外方に刺鍼しなければならないばあいは、やはり鍼を倒しますので、ピッタリ押し手をくっつけるためには、足を前後にやや開き膝を曲げてさすことが要求されます。 それでも患者の背中と完全に向き合う形にはならないと思いますので、出きるだけ前に出した足に重心をかけ、背中が丸くならないように意識して行なっています。 しかし、やむをえないばあい、正確に鍼を硬穴/圧痛に当てたい場合には、術者が左(患者の腹部側)にきて刺鍼します。 以上工夫というほど目新しいわけではありませんが、いくつか上げてみました。 考察 治験発表ということで治験例を挙げながら発表するのが本筋ですが、適応側が合う人を例にしたとしても、説明するたびに、症例を換えなければならず、私も皆さんにもこんがらがってしまうため、省略させていただきました。 何故、このテーマを択んだかといえば、私は初めのころ8分鍼を使っていたこともあり、基本的には左足太白のようにあえて無理をして押し手を置き、姿勢を崩しながら鍼をして気が漏れるよりは直刺でも良いからしっかり押し手を作って鍼をしたほうが良いと考えていました。初めのころ前支部長からも「鍼の方向はあまり気にしなくていいよ」と言われましたので、最近までこのようにしていました。 しかし、本部のとき、谷内先生は「経に逆らっても良いから経絡治療は 鍼を倒したほうが良い」 といわれ、そのときは「そんなものかなー」と思っていました。実際の臨床でも 普段は自分が楽なやり方でやってしまうので、左側に立ち太白や陰谷に刺鍼していました。 しかし、よく脈診すると、確かに直刺であっても虚/実、浮/沈は整いますが、数/遅ににかんしていえば迎随に従ったほうが良いようです。 ただし、先ほども書きましたが、迎随をあまりにも意識すると、刺し手に気を捕られ、押し手の拇指人指側に力が入りやすく、また、反体側に立っているわけですから、腕を伸ばしぎみで重心も前屈みになりがちで脈が整わず、硬かったりぼやけたりすることもしばしばです。刺鍼技術がないためでありますが、案外意識してみると、正確には出来ていないようです。 刺鍼時はまず経に従って取穴し押し手 の位置をを決める。次に自分の足の位置を決める。次に腰を落として、そこで始めて鍼を持って行く。抜鍼して押し手を離してから腰を上げ足を戻す。 この流れがどのような状態でも、どの穴でも、どんな体格でどんな場所でも 無意識のうちに出来て、始めて人並の経絡治療科だと思います。 私のように意識してやっても美味く出来ない。関節が硬く刺鍼中に腿に疲労感を覚え、体を動かしているようではまだまだもんだいになりません。 どんなスポーツでも力仕事でもそうだと思いますが、刺鍼についても腰を入れて鍼を刺すことが大切で、それが出来ないと 気を動かす経絡治療とはなりません。 最後に基本刺鍼を指導することが最近多くなっていますが、皆さんも押し手に意識が行き過ぎていて、迎随になっていない人がほとんどのようです。基本刺鍼で出来ないことは実地臨床でやっていないということであり、臨床においては絶対に出来ていないと思いますので、もう一度確認して鍼を刺す努力をしてください。「逆らっても倒すほうが良いかどうかはその人の考え方や刺鍼技術のレベルによりますが、従って出きるときは必ず45度以下を目的に鍼を倒して刺鍼する癖をつけてください」。 2003年新潟支部定例会において 今泉 聡

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治験発表虚体患者の治験例

2010年9月16日

治験発表虚体患者の治験例

我々鍼灸院で取り扱う患者の多くは、急性劇症を訴えて来院する患者を除けば、慢性的で緩慢な症状の経過をたどり、体質的にも虚体なものが多いように思われます。

日頃患者に対する場合、病症の経絡的弁別、腹症、脉症(比較脈診)、切経などを適宜行なってはいますが、いささか証を立てることにきゅうきゅうとしすぎ、「診断は陰陽、治療は五行」という原則から外れているように思います。

証には体の証と病の証とがあり、体の証には「陰/陽/虚/実」の大別が必要です。その診断の後、証決定の第1段階(施術の選択)では、「新旧」「劇易」「緩急」「虚実」の判定により、手技手法を決定し、その後治療目標となる証を立てなければなりません。その診断を怠ると、かりに病の証主証)が合っていたとしても、治療効果、治療間隔、治療内容、日数等が狂い予後も不良となります。

今回は陽虚体質、陰虚体質と思われる患者の治験を発表いたします。

教科書の理屈どおりには病症、脈状、切診とう体質判断が可能な条件が揃うわけではないことを、予めお断りしておきますが、参考までに

陽虚証とは、邪気浅く表陽部にあるが、これを追い出すべき体力が伴わないので、病症は比較的緩慢で微熱自汗して疲れやすく眠けをもようし脈は全脉微弱である。これは陰より補ってから陽分に現れた虚生の邪を補中の瀉法によって処理しなければならない。時に陰陽ともに補うこともある。

陰虚証とは、病が古く陰分を侵しており、体力も虚損しているので、徹底的に補法を行なわなければならない証である。虚熱/るい痩ない切れ慢性蹴り下血とうをあらわし、皮膚こそうして脈は微細か細数を現す。

尚、陽が(実すれば外熱し陽が虚すれば外寒す。陰が実すれば内寒し陰が虚すれば内熱するという病理を踏まえ診断のポイントとします。

症例1陽虚証と思われる患者

患者50歳女性縫製の仕事兼業農家

初診平成13年2月

主訴 腰痛

現病歴

2年ほど前から腰痛がひどくなり、医者にかかっているが、坐薬を使用しているが治らない。立ち続けていたり体を回転させるときに右の腰から尻にかけて痛みが出る。

問診

三日ほど前から左の肩関節が痛む。便秘がち。その他とくに苦痛を感じていることはない。コレステロールや中性脂肪が高い。

切経

肥満で肌はかさかさしている。皮膚は湿り気のある冷たさ。(外寒)と見ました。

第1から第5胸椎の後湾変形と椎側のキョロ。腰椎下部の前突変形。SLRは陰性。右仙腸関節部に生ゴムよう所見。足先が冷たい。

腹診

膨満しているが力がない。腎と脾の診所かんげして虚。

脈診

脈状診 沈やや硬めであるが虚と見る。

比較脈診 腎/肺/脾の虚。膀胱の虚。胃/小腸/胆はややあり。

証決定

まず体の証としては、肥満し体が冷え皮膚こそう足先冷たい便秘等は、陽体でありながら虚を現していると判断する。

病では旧病。病状では易症状。病の進行状態は緩やか。体力は未だあるが邪を追い出せない状態と見て陽分に邪を現せさせることが治療のボイントとみました。

病症の経絡的弁別

肥満/コレステロール/中性脂肪が高い(栄養状態)/便秘は脾土経。

肩間接の痛み/皮膚こそうは肺金経。

立ちつかれ/骨の変形/足の冷えは腎水経の変動と見ました。

以上の事柄より腎虚脾虚相剋

の証としました。

治療は定則どおり左復溜尺宅/右陰陵泉に補法。京骨に補法。豊隆支正よりこにおうずる補中の瀉法。表治法は腹部/ナソ部/背腰部に行い湧泉/胸椎側キョロに温灸。申脈/後谿3,2の奇経灸を行ないました。

2月という季節柄か、脈が硬く沈み渋りもあり、腎虚本証に結び付けましたが、以来脾/腎相剋、脾虚肝実、腎虚脾実など証がいろいろ変わりました。

3回目から保険診療となり、季刊制限等があるため、ほぼ1日おきに治療を計画して行くつもりでしたが、雪が降るなどすると週1度となったり、4回治療をする週があったりなど患者に振り回され、やく28回の治療後、田植えを理由に中断となりました。

経過は腎/脾が3から4回続くと脾本証になるのですが、それがなかなか持続せず又腎虚に戻るということからも、体質改善には至っていないと思います。

また、一見がっちりとしていて体力もあるので虚の症状を現していたにもかかわらず治療回数やドウゼの多さが好結果を得なかったものと反省いたします。

症例2陰虚証と思われる患者

70歳女性主婦

初診平成13年6月

主訴 足の冷え

現病歴

去年の6月に心臓を検査したら僧坊便の異状と心房細動があり、高血圧があることが分かった。時々息苦しさがあり、尿に鮮血が混じっている。

その後食道に出来たポリープを切除し、1ヶ月ほど前から足の冷えが気にかかり

時々場所が変わるようである。

既往歴

10年ほど前にばせどし病

問診

肩凝り/頭重/心悸亢進//高血圧剤/血栓予防剤などを服用。

切経

痩せ型/胃下垂があり、皮膚のつやがある。自覚症状に比して皮膚は冷たくない。(虚熱があるものと思われる)右肩上部に100円玉ていどのゴムねんどよう所見。

腹診

虚腹で脾の診所にきょりの動を触れ腎の診所ざらつき虚。

脈診

脉状診 浮細にして虚不規則な不整脈

比較脈診 心/腎/脾/肺の虚。膀胱の虚。胃はややあり。

証決定

体の証としては痩せ型/胃下垂/足の冷え/細にして虚脉は陰体虚を現していると判断した。

病では比較的新病ではあるが、病状では易症状。病の進行状態は緩やか。体力がなくやせ衰えているため徹底的な補法が必要で根気強く鍼数を少なめに治療をすることを心がけました。

病症の経絡的弁別

僧坊便の異状/心房細動/不整脈/息苦しいなどは心火経の変動。

るいそう/肩凝りは肺金経の変動。

足の冷え/血尿/頭重などは腎水経の変動。

以上の事柄より、腎虚脾虚の相剋調整の証を立てました。

治療は右復溜/尺宅、左陰陵泉に補法。見脉し膀胱もやはり虚しているようであったため、京骨に補法。豊隆より補中の瀉法。表治法は右ナソのゴムねんどよう所見にたいし、深瀉浅補。最後に湧泉。公孫/内関に3,2の奇経灸を温灸にて行なう。

陰体でもあり虚体でもあるため、治療間隔をやや開けて行なうことにしました。

2回目6月11日「あまり変わりはない。右腰もやや痛む」

3回目6月16日「いくぶんひやひやした感じはなくなった」

4回目6月21日「昨日あたりからまた足の冷えがある」

5回目6月26日「足の冷えは時々きになるくらいになってきた」

6回目6月30日「足の冷えは改善されつつある。」

7回目7月14日「足の冷えはなくなり、不整脈もやや減ってきた。動悸がすることはなくなっている」

全て治療は腎/脾相克で行なう。4回目からは奇経灸を取りやめる。以後、2週間に1回の間隔で治療を行ない症状が治まっているので、

完治として現在は健康管理の

ため、月1回来院している。

脈状は脈に厚みが出て虚脉も平に近づきずつある。

この患者は1例目の人とは体系や体質も正反対と思われるが、

治療に関しては5回目まで五日に1回、8回目まで1週間に1回。11回目まで2週間に1回とこちらの指示通り来院してくれたことが、好結果に繋がったものと思われる。

とかく、治療を褪せるあまり、続けて通わせたり、ドウゼが多くなりがちであるが、この症例では、ただ一生懸命やれば結果が出るわけではないということを学びました。

考察

治験発表をするたびに、比較的印象に残った症例を用いますが、これは発表ということで後から自分なりに検討するからこのようになるのであって、患者の初診時に果たしてどれくらい4診法を活用し証決定や予後の判定に結び付けられているか非情に疑問です。「治療は五行というのは身につくもので、ただ比較して肺虚だとか、腎虚だとか言って治療をしているのだと思います。虚体患者であるのに痛みを強く訴えられ粗雑な手法をしたり、取らなければならない邪実を見落として補法優先とて補法のみ意識が行っていること等患者の素因体質病体を無視したちりょうをおこなっているのがほとんどではないでしょうか?」いずれにせよ「診断即治療」の出来る経絡治療を生かすも殺すも、我々鍼灸科の正しい「診断力」が求められるのは当然であります。「陰陽五行説」の理論に基づいてこそ真の経絡治療だと思います。

(2001年新潟支部定例会において 今泉聡)

追記

この治験発表は開業6年目に行なったものであります。経絡治療の世界に入ってから10年近くたっていますので、今までやってきたことに対して、そろそろ自信も出てくるころですが、その一方で「これでよいのだろうか?」と疑問に思い始めるころであったのでしょうね。

教科書を引用しながら基本に返って見直して治療を進めていくことの大切さを力説しています。更に、病の証ばかりではなく体の証を診断出きるようになりたいという今泉の気持ちがにじみ出ていますが、この治験発表から10年もたったいまであっても、なかなか臨床においては結び付けられていないのが現実であります。

これを読んでくれた皆さんも頭では鍼灸術は病気を治すのではなくて、体を治すのだということはよくよく分かっているとは思いますが、やはり症状に捕われたり病名に振り回されてしまうのではないでしょうか?

鍼灸師一生の過大ですね。

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